ある資材置き場で刺殺体が発⾒される。被害者は地元で細々とスナックを経営する20代⼥性。ほどなく19歳の⻘年が殺⼈および死体遺棄の容疑で逮捕された。⻘年の弁護は、ある裁判を機に過去にとらわれ“真実”に背を向けた元裁判官の弁護⼠・菊地⼤三郎(椎名)に託された。⻘年の⾃⽩もあり、すぐに判決が下る単純な裁判だと思われたが、検察での取り調べから⼀転、裁判で⻘年は殺意を否認する。⻘年のことを調べるうちに、菊地は再び真実と対峙(たいじ)する。やがて法廷では意外な事実が次々と露⾒し、裁く者を惑わせる。果たして⻘年は、本当に⼈殺しなのか―――。

 椎名が演じる菊地は、過去に裁判長として自身が下した判決がトラウマになりながらも、抜群の洞察力と機知に富む弁舌で、裁判という空間と誠実に向き合う。殺人の罪を問われている被告人と被害女性のみが知る、事件の裏に潜む孤独と絶望。その闇の真相をたぐり寄せていく。

 椎名は「原作は半世紀以上も前の小説ですが、そこに描かれた人間模様は今も色褪せない魅力にあふれています。多くの人が詳しくは知らない裁判の制度や手続きが、驚くほど緻密に書かれていて、そのドラマチックな展開に心が躍りました。脚本に関しては、500ページあまりの原作を、その推理要素の面白さを損なうことなく全4話にまとめ、時代背景を現代にする上で、とてもうまく裁判員制度や成人年齢引き下げによる影響を取り⼊れていました」と絶賛する。

 役づくりに関しては、「しつこく脚本を読み込みました。そして遠方にいる知人の弁護士に、メールを通して何度も疑問点に答えてもらったり、現職の裁判官と面談がかなう幸運にも恵まれました。その後、殺人事件の刑事裁判の法廷に傍聴に行き、実際の裁判の空気感や法律用語の言い方などを参考にさせていただきました。現場でも弁護士の監修が立ち会い、収録の直前まで、リアリティーにこだわりました」と報告。