「古畑任三郎」シリーズ(田村正和主演)
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言わずと知れた三谷のテレビでの代表作。全編コメディータッチで貫かれていることに加え、本格ミステリー指向、ワンシチュエーション指向、引用好き、伏線好き、楽屋落ち好きなど、彼の持ち味がこれでもかと注ぎ込まれた渾身(こんしん)の1作だ。「刑事コロンボ」でおなじみの倒叙形式(犯人による犯行が冒頭で描かれ、それがどう暴かれていくかが見どころとなるミステリーの形式)を、日本で一気に広めた。「ガリレオ」シリーズ(07~13年/フジテレビ系)の劇場作「容疑者Xの献身」(08年)や、現在放送中の「風間公親-教場0-」(23年/フジテレビ系)なども、倒叙にあたる。
主演は田村正和。それまでのキャリアの中で、既に方向性の違う代表作が多数あった彼にとって異彩を放つ作品だったが、今では「古畑」が田村の最もポピュラーなキャラクターといえるだろう。
そして、倒叙形式の大きなメリットとして、犯人役に大物ゲストを起用できるということがある。中森明菜、堺正章、菅原文太、明石家さんま、木村拓哉、鈴木保奈美、山口智子、緒形拳、福山雅治、江口洋介、松嶋菜々子と、まさに主演級がズラリ。SMAPとイチローは実名のまま犯人役に挑んでいるので、木村は唯一「古畑」で2度、犯人を演じた俳優ということになる。ラストで田村とがっぷり四つで芝居ができるという特典付きなのは、俳優にとっても喜ばしいことに違いない。