涼子に初めて依頼を頼んだのは、「美の魔法使い」を名乗る人気美容家・愛原樹里亜(水野美紀)が院長を務める美容クリニックで被害に遭ったという女性、西田真紀(市川由衣)。結婚を控え、額にあるあざを消すために施術を受けたものの、一週間後にはすっかり消えたが、半年後に再びあざが浮かび上がり、前よりひどく悪化してしまった。真紀は樹里亜に被害を訴えたが、クリニックには責任がないの一点張り。警察にも駆け込み、カルテの開示請求もしたが、カルテに問題は見当たらず、刑事責任は問えないと言われてしまった。それでも、元に戻すための費用を樹里亜に支払ってほしいと真紀は諦めない。後輩弁護士によれば、クリニックには悪い噂が絶えず、巧みに隠蔽された悪事を暴けば樹里亜から相当な額の金を引っ張れるという。真紀のためにも依頼を引き受けた涼子だった。
樹里亜を演じた水野美紀といえば、1990年代から数々のドラマ・映画で活躍してきた人気女優であり、バラエティ番組で見せた“男勝り”な一面でも広く知れ渡ったサバサバ系女優である。樹里亜は、表の顔は気品あふれる「美の魔法使い」だが、涼子が正面から真紀の件を訊ねにいくと、「あなたニュースに出てたでしょ。依頼人ぼこぼこにして逮捕された暴力女弁護士!」とけん制をかまし、「とっとと帰んな。元犯罪者が!」と悪態をつくヤンキー気質な素顔を見せる。金や名声、男への欲をたぎらせ狡猾に生きる樹里亜は、水野のイメージとは相反するキャラクターだが、水野は憎たらしい“涼子の敵”として見事に演じきった。
涼子は偶然知り合った貴山とタッグを組み、貴山を樹里亜の秘書に応募させる。見事合格した貴山のおかげもあって、樹里亜がカルテには載せていない診療記録を黒革の手帳に記していることが発覚。中身を写真に収めることになんとか成功し、肌が壊死する事例もあるなど裁判沙汰になっている、日本では無認可の新薬「lavan」を使用していたことを突き止める。涼子たちの勝利……かと思いきや、樹里亜は手帳に書いてあるのは「lavan」ではなく「1avan」で、自分のオリジナル美容薬だと言い張る。子どもじみた言い訳だが、物的証拠がない以上、涼子はこれ以上追及できない。樹里亜に「あんたごときじゃ一生私に勝てないの」と勝利宣言をされてしまう涼子だった。
樹里亜の秘書として忍び込んでいた貴山がこっそり2000万円以上するという高級ネックレスをレプリカにすり替えて盗むという機転を利かせて一矢は報いたが、とても喜べる話ではなかった。調査に時間がかかっている間に婚約破棄をされてしまった依頼人の真紀は、ネックレスを渡す前に自ら命を絶ってしまっていたのだった。涼子が敵に敗北した過去に驚かされた視聴者も多かっただろうが、その敗戦はあまりにもビターだった。