「ビジネスマンは好奇心旺盛であることが大事」「アンテナの感度を高めて広げることが重要」などとよく言われます。しかし「具体的にどんな行動をとったらいいか分からない」という人も多いのではないでしょうか。今回の記事では「仕事と人生がうまく回り出すアンテナ力」(三笠書房、2019年)の著者で電通ビジネスデザインスクエア コンセプターの吉田将英さんに好奇心を高めるための方法をおうかがいしました。
好奇心はビジネスに必要?
広辞苑によると“好奇心”とは「珍しい物事、未知の事柄に対する興味」という意味です。吉田さんによればビジネスの現場では直接的に「好奇心が大事だ」と言われることがなくても、実際には好奇心をうまく使うことが求められるシーンがよくあるそうです。
吉田将英さん(以下、吉田) :仕事をしていると「自分の意見を言おう」「自分の頭で考えよう」と言われることがよくあります。若い人で「もっと自分のアイデアを出せるようになりたい」と考えている人や、なかには「なんとなく仕事がつまらない」と感じている人もいるかもしれません。言い方はさまざまありますが、どれも「どうしたら自分の好奇心をうまく使いこなすことができるか」を考えると解決できることがあるんですよね。
とはいえ好奇心は「ビジネスだけで必要なスキル」というわけではありません。むしろ普段の生活から好奇心を持って過ごすことが大切で、そうすると楽しく生きることができるようになると吉田さんは言います。
吉田 :「エリートになる」「出世をする」などいわゆる仕事術やビジネスの領域で好奇心があったほうが優秀になれる……みたいなこともあるかもしれません。ただそれよりも重要なのは、「好奇心を使ったほうが生きやすくなる」ということなんですよね。趣味や恋愛とかプライベートでも好奇心を使いこなしたほうが楽しくなる……そういう生きやすさの一つとしてビジネスで好奇心を使う場面があるのだと思います。
どうしたら好奇心が持てるようになる?
仕事でもプライベートでも好奇心を持つことが重要……と言われても「どうしたら好奇心旺盛になれるのか分からない」という人も多いかもしれません。しかし「こうすれば好奇心が持てる」という正解を探すのではなく肩の力を抜いて「自分が興味あるもの」について考えてみることが重要です。
吉田 :「いかにして好奇心を持つか?」みたいな問いを立てると、途端に行き詰まってしまうことがあると思います。でもそんなに難しく考えずシンプルに「今何がしたいのか」「最近何を面白いと感じたか」といったことを振り返ってみると、自分が興味を持っている物事が見えてくるのではないでしょうか。
周囲の物事に興味や関心を抱いたとしても、「自分はそこまで興味があるわけではない」と感じてしまう人もいるかもしれません。しかし「少しでも興味がわいたら手を出してみるべきだ」と吉田さんは言います。
吉田 :僕はよく「好奇心の初速を早くしよう」と言っているのですが、「何か面白そうだ」と思ったときにパッと飛びついてみることが大事なんです。真面目な人ほどあれこれと考えて二の足を踏んでしまいますよね。そうではなくて「直感で面白そうだ」と感じたら試してみる……本当は誰でも何かしら好奇心を持っているんですけど、「自分の好奇心なんかたいしたことないからダメだ」と引っ込めてしまっているだけな気がします。まずは好奇心のハードルをぐっと下げてみましょう。
いろいろな物事に興味を抱くようになったとしても、情報過多な現代では「読むべき本」や「見るべき映画」が大量にあり「何から手をつければよいのか分からなくて路頭に迷ってしまう」ということもあるかもしれません。しかし「○○すべき」という声に必ずしも従わなくてもよいのです。
吉田 :今のように選択肢が膨大にある時代だと、好奇心のレーダーが目移りしてしまう状態に陥ることもあるでしょう。ただそういった人の大半は、「これが正解」というマニュアルを自分の中に持ってしまっている気がします。本当はそんなものはないんですよ。「これを知らないのは非常識」という人もいるかもしれませんが、そういう「正解」を鵜呑みにする必要もありません。むしろそうした「正解」にあらがう力が、自分の中にある好奇心だと思います。
社会人になってから好奇心を高める方法
学生時代は好奇心旺盛でいろいろな物事にチャレンジしていたけれど社会人になってからは仕事以外に興味を抱けなくなってしまった……という人もいるのではないでしょうか。しかしそもそも仕事に興味を抱くことができれば楽しい人生を送ることもできるはずです。
吉田 :仕事はつまらないものだ……みたいな暗黙の了解がありますけど、「そもそもなんで仕事がつまらないのか」という問いと向き合う必要があると思います。もちろん人によっていろいろな事情があるとは思いますが人生の大部分を仕事が占めている以上、今の仕事に面白味を見出すことができれば生きることが楽しくなりますよね。
とはいえ、人によっては「仕事以外のプライベートな時間で好奇心旺盛でありたい」と思うこともあるでしょう。そんな人に向けて吉田さんは「毎日10分だけ自分史上最も柄にもないことをやる」「友達のちょっとした誘いに乗ってみる」といった行動を提案しています。
吉田 :仕事以外の時間を充実させたいのであれば、まずは時間を捻出するためのライフハックに注力するとよいでしょう。それと「毎日10分だけ自分史上最も柄にもないことをやる」「友達のちょっとした誘いに乗ってみる」など少しだけフットワークを軽くしておくと、新鮮な刺激になると思います。もし「好奇心を持たないといけない」という強迫観念で趣味や副業を始めようしているのであれば、その時点で好奇心とは言えないでしょう。そんなときは無理しなくていいんじゃないかと思います。