ムツゴロウの愛称でみんなに愛された畑正憲が亡くなった。享年87。

 東大理科二類に現役で合格し、小説家を志望したが、同年齢の大江健三郎がいたため、「とてもかなわない」とあきらめ、在学中に結婚し、卒業後は学習研究社に就職。

 その後、退社して北海道の浜中町の無人島に妻子を連れて移住したのは1971年だった。

 翌年、浜中町にムツゴロウ動物王国を開園して、動物との生活を描いたエッセイなどを世に送り出した。

 1980年12月にフジテレビ系で放送された『ムツゴロウとゆかいな仲間たち』(2001年まで20年間放送されることになる)が30%を超える視聴率を記録し、人気者になる。

 ライオンに指を噛みちぎられても平然とし、アナコンダに首を絞められて悶絶。発情期の野生のオオカミに求愛され、「コップ二杯分の精液を手で受け止めたんですよ。素晴らしいですねぇ」と満面の笑みを浮かべた。

 動物を食べることも好きで、シマウマやサソリも食べていたという。

 麻雀好きで、3日3晩不眠不休は当たり前だったそうだ。だが、バブル後に観光客が減り、東京あきる野市に東京ムツゴロウ動物王国を開園するが、わずか2年で約8億円の借金を抱え、経営破綻する。

 その後、畑が引き継ぐが、約3億円の借金を抱えてしまう。だが、専門学校の教師や講演を1日何件もこなし、7年で完済したという。その時、畑は79歳だった。

 畑は周囲にこう述べていたそうだ。

「転んだら転んだ先に大地がある。大地があるなら、また立ち上がれる。僕はそういう生き方をしてきた」

 妻の純子は、

「主人は素敵な人でした」

 といっている。ムツゴロウよ、あなたは永遠だ。