万太郎の母・ヒサ(広末涼子)が亡くなって3年、万太郎は9歳に。演じるのも、森優理斗さんから小林優仁さんにバトンタッチ。成長しても、万太郎の草花好きはあいかわらず。商家でありながら学問所で勉強することを許されたのに、草と話をするほうが楽しいと行きたがらない。しぶしぶ行ってみれば武家の子たちに目をつけられ、稽古という名目で木刀を持たされて大ピンチ。時代の変化でいちばん大変だったのは、武家の子たちかもしれないですね。これまでは町人相手にいばっていられたのに、今は古びた着物で塩むすびを食べる、貧しい状況。仕立てたばかりのぴかぴかの着物を着て、豪華なお弁当(3段重ね!)を広げる万太郎を見てイラッとするのは、わからなくもない。武家の佑一郎(岩田琉生)たちにとっては、剣術の腕と、腰に差した刀だけが武士としての最後のプライドだったのかも……だからって、弱い相手を木刀で殴ったらただのいじめ。「代わりにわしを打ち据えてつかあさい!」と万太郎をかばうお目付役の竹雄(南出凌嘉)の献身に、胸がキュッとなりました。まだ子どもなのにすでにかっこいい、すごいぞ竹雄。

 いじめられて、授業を受けずに帰る万太郎に、ばしゃっと水を撒いて虹を作るみたいに「今こそ、変わる時なんじゃ」と新しい考え方を投げかけてくれたのが学問所の学頭、蘭光先生(寺脇康文)。でも今の万太郎にはそれは受け入れられない。「変化」って怖いですよね。万太郎の周りの人々も、変化の前で恐れたり諦めたりして立ち止まっている。迷いつつも、昔からのしきたりを変えないでいいと言うタキ(松坂慶子)。移り変わる時代にいらだつ武家の子たち。なかでも、万太郎の姉の綾(高橋真彩)の、変わることを許されない境遇がかわいそうで。酒蔵の匂いや、中で何か生きている気配を忘れられず、酒造りを知りたくて帳面を盗み見てしまう綾。彼女が峰屋を継いだらきっとうまくいくはずなのに、「おなごだから」嫁に行くと決められている。「昔っからの決まりじゃ」と諦めてつぶやく姉に「そんなの変えたらええ!」と強く言った万太郎が、昼間の蘭光先生の言葉を思い出してハッとするところ、よかった。誰かに言われてハイハイとすぐ受け入れるのではなく、目で見て自分の頭で考えて、そこでやっと腑に落ちる万太郎、賢い子だなあ。