◆言葉や説明はいらない、とにかく観てほしい映画

 先ほど書いたとおり、この映画は淡々と親子の日常を描いています。ジョンはマイケルに絵本を読んで寝かしつけ、朝ごはんを作り、幼稚園に送る。その繰り返しの毎日。そんな日常の中で、4歳のマイケルは父の姿を見ながら世界を知り、毎日少しずつ成長していきます。

 明日も明後日も、その1年後も、マイケルは確実に成長していく。そして、4歳のマイケルには理解しきれないことも、その成長と共にわかる日が来る。物語が終わりへと近づくとともに、その事実が重く、辛く、温かく、のしかかります。最後に残ったものは諦めでも、悲しみでもなく、ただただ大きな愛だった。だんだんと変わっていくジョンの表情が、今も私の中に残り続けています。

「……ん? 結局どういうお話なの?」と気になってくれた方は、ぜひ映画を観ていただきたいです。言葉や説明はいらない、そんなふうに感じられる映画なんじゃないかなと思います。じゃあコラム書くなよ~! って感じですが!

 ぜひたくさんの方に観ていただきたい、心からそう思う映画でした。

●『いつかの君にもわかること』

配給/キノフィルムズ イタリア、ルーマニア、イギリス合作映画。『フル・モンティ』のプロデューサーでもあるウベルト・パゾリーニが監督・脚本。©2020 picomedia srl digital cube srl nowhere special limited rai cinema spa red wave films uk limited avanpost srl.

<文/松本穂香>

【松本穂香】

’97年、大阪府生まれ。’15年にデビューし、映画やドラマを中心に活躍。週刊SPA!にて、映画コラム「松本穂香の銀幕ロンリーガール」を不定期連載中