正直に言うと、朝ドラの主人公の子ども時代を「ちょっと苦手だな」と感じることもあります。のちに大きなことをやり遂げるという朝ドラ特有の物語に信憑性を持たせるためなのか、大人に「やめろ」と言われても思い切った行動をする幼い主人公に、時々「子どもだからって、それはちょっとやりすぎでは」と言いたくなることもあって。今回の『らんまん』でも、万太郎は内緒で家を抜け出して花を探しに出かけ、綾は入ってはいけない蔵に入り、竹雄も禁じられた山へと登るんですが、それはよくある「主人公たちのいたずらやおてんば」ではない。3人がいけないと知りながら、禁を破り、暗い未知の場所へと一歩踏み出すのは、それぞれの大切な誰かのため。万太郎は母・ヒサが好きだと言っていた花を持ち帰りたい。綾は大事な弟を守りたい。竹雄は万太郎と綾を無事に家に連れて帰りたい。でも彼らのいちばんの願いは叶わず、万太郎が母に差し出した花は間違っていたし、母は病から回復することはない。だけど、目に見えなくても神様や天狗がいるように、花が咲けばそこにはきっとお母ちゃんがいる。子どもたち3人の健気さ、「また会おうね」と微笑むヒサの愛に、泣かされっぱなしでした。

 子ども3人が本当にかわいいのですが、特に「しっかりしたお姉ちゃん」な綾ちゃんに感情移入しながら見てしまうのは、私が長女だからでしょうか。みんなを笑顔にできる万太郎に少し嫉妬をしながらも、弟を愛する綾ちゃん。もう長くはないだろう母を思って、誰も見ていないところでひとり泣きじゃくる綾ちゃん。彼女がどんなにがんばって仕事をしても、みんなは跡継ぎの万太郎のことばかり注目するし、女だから蔵に入ることもできない。そんな状況で、綾ちゃんがどんなふうに成長していくのか、いつか心から笑える日が来るのか、気になります。

 それにしても、ディーン・フジオカさんが「天狗です」「っていうか、実は坂本龍馬です」って出てきても「あーわかるわかる」ってなんだか納得しちゃうの、なぜなんでしょう。突飛な設定であればあるほど輝くという、すごく不思議な俳優さんですね……。「生まれてこないほうがよかった」などと分家にひどいことを言われて傷心の万太郎に「寝小便じゃろ? 何を隠そうわしも…」「わしも子供の頃は泣き虫の毛虫じゃったがよ」と、自分の弱さをさらけ出して励ます姿、かっこよかったなあ。もちろん「要らん命らあ、一つもない」も。