“KISHOW”こと声優・谷山紀章と、ギタリストとして活躍中の“e-ZUKA”こと飯塚昌明による2人組ロックユニット・GRANRODEOが2023年3月11日(土) に約6年ぶりとなる日本武道館でのワンマンライブを大盛況で終えた。その熱気をお伝えするオフィシャルレポートが到着!
デビューから18年、GRANRODEOにとって日本武道館は、これまで何度も忘れられないメモリーズを刻んで来た場所だ。彼らの代表的なライブシリーズ『Gナンバリング ROCK☆SHOW』を初めて開催した『G5ROCK☆SHOW』に始まり翌年の『G6』、年またぎのカウントダウンライブ、2017年の『G12』と、ワンマンだけでもこの地で幾度となくチャレンジャブルな歴史を紡いできた。武道館より大規模なアリーナワンマンも何度も成功させてきた彼らではあるが、ロックバンドの聖地と呼ばれる日本武道館は、やはり特別な場所であることに間違いない。
そして2023年3月11日。自他共に認める圧倒的ライブバンド・GRANRODEOが初めて、彼らの根幹を成してきたアニメタイアップ全32曲を一挙に解き放つヒストリカルな聖地として選んだのもまた、ここ日本武道館だった。ライブタイトルは『GRANRODEO LIVE 2023 "Rodeo Jet Coaster"』。2021年5月、アニメタイアップを中心としたシングルリードナンバーのみ全18曲を届けた『"Rodeo Coaster"』2daysのファイナル公演を、さらに強力にパワーアップすべく名付けられた『"Rodeo Jet Coaster"』は、スピードとスリルに満ちたジェットコースターのように、オーディエンスを乗せて一気に駆け抜けよう!という想いが込められた。
事前にアニメタイアップのみのセットリストになると宣言されたが故の期待感。2023年のワンマンライブはこれが一発目だというワクワク感。日本武道館でのワンマンは『G12』以来、約6年ぶりだという高揚感。ファンの、そしてGRANRODEO自身が抱く興奮の高まりは開演前から、埋め尽くされたアリーナから2階スタンド席までめいっぱい充満している。
ステージに目をやると、バンドセットのはるか頭上には牛骨と“GR”の電飾が飾られ、その下にはライブロゴが光る2面の巨大なLEDビジョンが存在感を放つ。開演の17時を回るやいなや会場が暗転すると、「うわっ……!」という声が沸き上がる。アコースティックギターの軽快な響きにのせたe-ZUKAの伸びやかなギターソロが聴こえ、暗いビジョンに映し出されたのは、夜の遊園地をきらめきながら縦横無尽に疾走するジェットコースターのレール。
KISHOW(Vo)とe-ZUKA(G)、二人が苦楽を共にしながらアニメソングのフィールドを走り抜けてきた道のりを、その2本のレールが表しているかのようだ。スパークするジェットコースターの下を下手からゆっくりと歩いてきて、配置につく瀧田イサム(B)、SHiN(Ds)とGRANRODEOの二人。一斉に点されるペンライトの真っ赤な光。シルエットになったKISHOWがステージ中央の張り出しまで出てきて客席を見渡して手を振ると、抑えきれないオーディエンスの声が自然発生的に大きくなる。
次の瞬間、e-ZUKAにスポットが当たり、ビジョンに映った手元のアップと共に放たれたのは、彼らのデビューシングル「Go For It!」のイントロだ。リフをワンフレーズ弾き、挟み込まれたブレイクに観客は早くも声を挙げてハイになる。後のMCで分かったことだが、前日まで体調を崩していたというKISHOWだが、e-ZUKAのギターソロ中に「武道館ーー!」と鋭く放った雄叫びも、いつも以上に迫力に満ちたロングシャウトも、全くそれを感じさせない。「Go For It!」をコール&レスポンスパートを待たず先に進めたセットリストは、GRANRODEOの歩みをなぞるように「DECADENCE」「慟哭ノ雨」と、ゴリゴリした手応えを持つ懐かしい初期ナンバーを続けざまに投げかけ、ピンク色に染まったポップな「Infinite Love」でようやく一息つく。
ニッコリと笑ったKISHOWが、「お待たせしました!GRANRODEOです!!」と誇らしげに叫んで、10数年前の初日本武道館公演を振り返りながら「感慨深いものを感じています」と噛みしめる。e-ZUKAも客席の熱に負けじと声を張り上げ、「この幸せな時間、短い時間では……いや、実はねー、クソ長いんですけど!」と笑うと、「どう見積もっても長丁場になるから」とKISHOWが追い打ちをかけて、オーディエンスを喜ばせる。そして「改めて開戦の合図を!」と、先人へのリスペクトを込めた武道館公演恒例のあの一言、「日本一、デカいライブハウス……武道館へようこそー!!」をシャウト。再び懐かしい名曲群を叩き込む。重量感あふれる「カナリヤ」で客席は黄色く染まり、疾走する「tRANCE」ではKISHOWがヘッドバンギング。「HEAVEN」を終えると、SHiNのドラム台の前に瀧田、KISHOW、e-ZUKAが集まってイントロを奏でてパッと散るGRANRODEO初期のライブではお約束の「デタラメな残像」の演出も飛び出し、「ROSE HIP-BULLET」でさらに大きな歓声が巻き起こる。
少しも休むことなくステージを駆け回るメンバーから熱を受け取り、オープニングから全力で暴れ続けるオーディエンスを指さして、息を切らしながら「なかなか楽しそうじゃねーか、思ったよりいいね~」と吹き出る汗をぬぐったタオルを回して笑うKISHOW。改めて今日のセットリストのコンセプトを紹介し、e-ZUKAはギャグを交えたフリーダムなトークで笑いを誘う。サポートメンバーの瀧田、SHiNと二人の息の合った掛け合いが、ほんの少しのぼせた頭をクールダウンしてくれる。
だが、そんな時間も束の間だ。KISHOWが「ここからは、GRANRODEOを押し上げてくれた作品群をやっていきたいんですが、その前にもうすぐ出る新曲を。今日“ヤツ”(小野賢章)はおりませんが、歌ってみたいと思います」と告げたのは、まだCDリリース前だった『黒子のバスケ』アニメ10周年記念アニバーサリーソング「ゼロステップ」だ。GRANRODEOと『黒子のバスケ』の蜜月の出発点となった「Can Do」を彷彿とさせる明るくスポーティーな「ゼロステップ」は、タイトルのイメージ通り原点回帰を感じさせる1曲。KISHOWの艶のあるブライトなボーカルは、シングルに“feat.小野賢章”名義で収録された小野賢章とのデュエットバージョンとはまた違う、のびのびとした軽快な魅力をたたえていた。
そしてここからは、『黒子のバスケ』でGRANRODEOが担当した主題歌6曲が、ショートバージョンのメドレー仕立てで次々に披露されていく。どの曲もワンマンライブではキラーチューンとなる“強い曲”ばかりだが、どんなライブでも遊び心を忘れない彼ら。中間点に置かれた「変幻自在のマジカルスター」では、1コーラス目をKISHOW、e-ZUKA二人だけのアコースティックバラードアレンジで聴かせ、バンドサウンドへと華麗に引き継ぐ実に小粋な演出が! 原曲はコミカルな香りを残しているが、e-ZUKAの細やかなアコースティックアレンジとKISHOWのハイレベルの歌唱が混じり合うと、これほどまでも感動的な楽曲へと姿を変えるのか!と、改めてGRANRODEOの音楽性の高さに舌を巻く。すっかりアニメの世界感に浸りきれた『黒子のバスケ』ゾーンのラストを飾った「メモリーズ」では、KISHOWが歌詞を歌い換えながら、「一番いいのは……一番いいのはライブハウス日本武道館だよ!」と絶叫していた。