◆これは、映画なんですか? 感動作なんですか?

 こうやって私一人が嘆いたところで、この言葉はその子たちには届かないし、抱きしめることもできない。だけど、こうして映画にして世界に発信することで、何かのきっかけになるのかもしれないと、改めて感じました。そしてまた、映画で終わらせてはいけないとも。評論する言葉のなかには、「傑作」や「感動作」といった言葉が並んでいました。なぜかはわからないけれど、それが悲しかった。

 決して人の感想を否定したいわけじゃないんです。どんな感想を持とうとそれは自由だし、間違いなんてないから。だけどこれは、映画なんですか? 感動作なんですか? ものすごく生意気なことを言っているのかもしれないけど、紛れもないこの悲しさと虚しさを見過ごせなかった。ここまで自分勝手に感想をつらつらと書いてしまったけれど、これ以上踏み込んで話をするには、私はまだまだ無知すぎる。でも、わかろうとすることが重要なんだと思います。

 私はとても無力だけれど、彼らに対して何ができるんだろう。

 映画という枠を超えて問いかけてくる、そんな作品でした。

●『トリとロキタ』

配給:ビターズ・エンド 移民のトリとロキタが、偽りの姉弟となって過酷な社会を生き抜こうとする人間ドラマ。©LES FILMS DU FLEUVE-ARCHIPEL 35-SAVAGE FILM-FRANCE 2 CINEMA-VOO et Be tv-PROXIMUS-RTBF(Television belge)Photos ©Christine Plenus

<文/松本穂香>

【松本穂香】

’97年、大阪府生まれ。’15年にデビューし、映画やドラマを中心に活躍。週刊SPA!にて、映画コラム「松本穂香の銀幕ロンリーガール」を不定期連載中