◆込み上げる悲しさと虚しさ。映画で終わらせてはいけない

 今回、私が紹介する作品は、『トリとロキタ』です。トリとロキタの2人は、アフリカからベルギーにやってきた移民の子どもたち。ロキタの夢は家政婦として働き、トリと一緒に暮らすこと。そのために偽造ビザを手に入れたくて、2人は懸命に働く。

 子どもの世界は狭い。目の前にあることにとにかく必死で、自分が無理をしていることにも気づかない。キャパシティをはるかに超えてしまっても頑張るしかない。そうしないと、生きていけないから。

銀幕ロンリーガール/松本穂香
『トリとロキタ』より Photos ©Christine Plenus
 どこまでも2人きりのトリとロキタ。そこに立ち入ることのできない、自分の非力さが悲しかった。「大丈夫だよ」と守ってあげる存在がそばにいてあげるべきだけど、それが叶わない。そしてそういう世界は想像もつかないほど、この世に存在している。