こういう『ニュースとの付き合い方を教えてください』という質問は、取材でよく聞かれるトピックなのですが、私は『何を知るか』よりも『なぜ?』と問うことの方が大事だと思っています。たとえば『ニュースは中立の立場が大事』という人はたくさんいますが、『なぜ中立的な情報を得なければならないのか?』『その考えはどこから来ているのか?』『中立であるためにはフェイクニュースも読む必要があるのか?』、本来はそういうところから考える必要があるわけです。SNSでは、フォロワー数の多いアーティストが『政治に興味を持とう』『選挙に行こう』『差別はいけない』と意見を言っただけで、『偏った意見だ』『思想が強い』と言う人がたくさん出てきます。『その意見をうのみにせず、いろんな意見を中立的に聞こう』という人も。でもそこで『中立とは何か』が議論されることはない。『ヘイトクライムで黒人が殺された』という事件があったら、『黒人にも非があった』『どっちもどっち』と受け止めるのが果たして中立であるということなのか。特に考えもなく『中立的』を信奉する人は、権力関係に鈍感だと感じます」
―― 鈍感さといえば、竹田さんが以前ツイートしていた「日本からやってきた研究生と話したら、全く政治のことを知らず、関心もなかった」という話が、とても印象的でした。
「その人は理系の研究生でしたが、日本にいるとジェンダーのことも、差別のことも気にしなくていいし、社会のことを知らなくても、研究者としての職はあるから生きていける。社会に関心がなくても生活に支障がないし、社会というのは空気のような存在で、違和感を持つこともない…いわばマジョリティー属性なんです。逆にいえば、日本の社会に違和感を持っている人…何かしらマイノリティー属性を持つ人の方が、ニュースに関心を持ちやすいというのはあると思います。つまり、ニュースに対して当事者意識を持っているかどうか。『新聞を読まないと就職活動やビジネスに対応できない』と新聞購読を訴える広告がありますが、あれはそうでもしないと当事者意識や興味を持てないことの表れだと思います。だから結局、『どうやってニュースに関心を持つか』というのは『当事者意識を持てるか』という話に行き着くのかもしれません」