今後も裏から政治に関わるという鶴巻に、鷲津は「そうやってあなた方は、いつも権力にしがみついて……」と怒りを見せるが、鶴巻は「同じだろ? 君だって」と喝破する。「気持ちいいだろ? 力を使って誰かを救うのって。そうなんだよ。気持ちいいんだ。誰かのために善を成す。でもそのためにはもっと力が必要になる。いくつかの善を重ねるうちに、いつかそれが悪と呼ばれるようになる。……君もすっかりとらわれてるんじゃないのか? 権力という魔物に」という鶴巻の持論に、鷲津は何も言葉を返せない。自分が鶴巻のような政治家になっていると認められない鷲津は、竜崎に「どうしてですか?」と食い入るが、無視されてしまった。

 官邸への出入りも控えるよう言い渡された鷲津。そこに、鶴巻の引退によってふたたび秘書の職を失ったかつての同僚・虻川勝次(田口浩正)が現れる。虻川は鷲津が職を失うのも時間の問題だといい、怪文書の犯人では自分ではないと教える。「鷲津亨を狙っているのは俺や鶴巻さんだけじゃねえってことだよ」との通告どおり、鶴巻の引退後も怪文書はさらに送られ続けた。「この程度も処理できないようじゃ……」と竜崎に説教され、このままでは総理補佐官からも外されると危機感を覚えた鷲津は、犯人探しにますます躍起になり、蛍原までも疑ってしまう。身内までも疑い始めた鷲津を見るに見かね、犯人は自ら正体を明かすことに。やはり犯人は秘書の蛯沢眞人(杉野遥亮)だった。

 前回記事でも言及したが、蛯沢は、亡くなった兄の陳情を担当し、放置したのが鷲津であるに気づいたのだった。それでも、「弱い側の立場で、俺の議員としての力を使いたい」という鷲津の言葉を信じ、一度はついていくことを決めた。しかし、鷲津は変わってしまった。鶴巻潰しや怪文書の犯人探しに夢中になるあまり、地元後援会の会合出席や大事な陳情も他人任せ、挙句に長年支えてきた蛍原を疑う始末。蛯沢は「今の鷲津さんがやってることは犬飼や鶴巻と同じじゃねえかよ! 弱いもんの味方だと思ってたのに、結局あんたもあいつらと同じなんだよ!」と、鷲津への落胆と怒りを爆発させる。そして「鷲津亨を許さない」と宣言したのだった。

 すっかり窮地に陥った鷲津。第10話では、その変貌ぶりに妻・可南子(井川遥)や息子の泰生からも呆れられ、親友のはずの鷹野を怪文書の犯人だと疑い、「苦労知らずの二世議員」呼ばわりして激高されてしまう。次々と周囲から見放されていく鷲津に再起の目はあるのか。そして気になるのは鷹野の動向だろう。厚生労働副大臣のポストに滑り込んだ鷹野を、竜崎は「なかなかの策士」と評価し、「君も気を付けたほうがいいかもしれないな」と鷲津に忠告していた。熊谷を使って鶴巻の汚職ネタを鷲津に与え、結果的に鷲津を押しのけて出世した鷹野の狙いはどこにあるのか。