まさに「四面楚歌」だ。弱者を救おうとするひたむきな姿勢で、周囲を味方へと巻き込んできた鷲津亨(草彅剛)。だが代議士としての権力を手にし、復讐という大義名分のもとにその力をふるい続けた結果、憎んでいたはずの「腐敗した権力」そのものに自らが変わってしまった。鷲津を取り巻く状況は、その魔力に溺れた末に招いた危機であり、視聴者としては、鷲津ではなく、彼に無下に扱われる周囲の人たちに同情してしまう。3月20日に放送されたカンテレ制作・フジテレビ系列放送の月10ドラマ『罠の戦争』の第10話を見終えた後の率直な感想だ。そして、その同情が、クライマックスで正体を明らかにした怪文書の犯人にも向けられたのは、言うまでもない。

 息子・泰生(白鳥晴都)が歩道橋から突き落とされて意識不明の重体となった事件の真相を追うなかで、議員秘書の立場から、注目の若手議員へと出世した鷲津。事件の犯人が、厚生労働大臣・鴨井ゆう子(片平なぎさ)の息子である文哉(味方良介)であり、事件の隠蔽を指示したのが民政党幹事長・鶴巻憲一(岸部一徳)であることを突き止めた鷲津は、文哉の出頭と鴨井の議員辞職、さらには鶴巻の幹事長辞任まで果たし、復讐劇は終わったかに見えた。だが、総理補佐官へと昇進した鷲津は、さらなる力を手に入れようとする。そんな鷲津に対し、逆風が吹き始めた。