◆ドラマを完結させる杉野&眞人
でも、眞人は、肝心なことを知らない(はずだった……)。兄の陳情を直接聞いて事務的に処理していたのは、実は鷲津だった。それを知らず、鷲津への恩返しだけでここまでついてきた眞人が、真実を知ったとき、どうなってしまうのだろうかとずっと気がかりだったのだが。
追う側から追われる側になった鷲津は、誰も信じられない四面楚歌の状態にある。蛍原や同僚議員の鷹野聡史(小澤征悦)など、仲間構わず疑いの目を向ける。眞人には早く真実を打ち明けるべきだった。息子の一件が収束したものの、鷲津は、眞人へ真実を打ち明けるタイミングを完全に逃してしまった。
まだ真実を知らないかに見えた第10話のラスト、鷲津への内部告発的な嫌がらせの文書を書いていたのが、まさかの眞人だったと明かされる。鷲津に対する敵意をむき出し、糾弾の言葉を噛み締めるごとに息をふるわせる。眞人が「絶対に許さない」とはじめて声を荒げる瞬間、ああ、杉野君の気持ちがこの役にどんと乗ったなと感じさせる。それこそ、「自分自身に向き合って、出た表現」ではないか。
誰よりも誠実であろうとする彼の魂の叫びだけが、鷲津の目を覚ましてくれるのか。ここにきてこの見せ場ありのクライマックス、杉野&眞人が、ここにドラマを完結させる。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu