満期保険金を受け取った場合の税務処理

満期保険金を受け取った場合、注意しなければならないのがその税務処理である。というのも満期保険金は、保険料負担者や保険金受取人が誰なのかによって税務上の取り扱いが変わるのだ。

保険料負担者と満期保険金受取人が同一の場合

保険料負担者と満期保険金受取人が同一である場合、受け取った満期保険金は「一時所得」として扱われ、所得税と住民税の課税対象になる。そして一時所得の課税金額は、以下の計算式によって算出される。

一時所得の課税金額=(満期保険金+配当金−払込保険料総額−特別控除50万円)×1/2

例えば、保険期間20年、月額保険料1万9800円、配当金なし、満期保険金500万円、という条件の保険に加入していると仮定する。この場合、満期保険金を受け取った場合の課税一時所得金額は、「(500万円−475万2000円−50万)×1/2」により算出される-12万6000円となり、税金を課せられることはない。

また満期保険金は、「年金」として受け取ることもできる。受け取った満期保険金は、「雑所得」に分類される。この場合も所得税・住民税の対象となることに変わりはないが、課税金額は「1年間に受け取った年金額−その受領金額に対応する払込保険料」により算出される。

保険料負担者と満期保険金受取人が異なる場合

保険料負担者と満期保険金受取人が異なる場合、受け取った満期保険金は贈与税の対象になる。基礎控除額110万円を差し引いた後の贈与額に応じた贈与税率は、以下の通りだ。

  • 200万円以下……税率10%
  • 300万円以下……税率15%、基礎控除額10万円
  • 400万円以下……税率20%。基礎控除額25万円
  • 600万円以下……税率30%、基礎控除額65万円
  • 1000万円以下……税率40%、基礎控除額125万円
  • 1500万円以下……税率45%、基礎控除額175万円
  • 3000万円以下……税率50%、基礎控除額250万円
  • 3000万円以上……税率55%、基礎控除額400万円 上であげた例と同じ、保険期間20年、月額保険料1万9800円、配当金なし、満期保険金500万円、という条件でシミュレーションしてみる。保険料負担者が父で満期保険金受取人が子である場合、「500万円−基礎控除額110万円」により算出される390万円が、贈与税の課税対象となる。

    同じ契約条件でも満期保険金受取人が変わるだけで、課税対象額にここまでの差が生じるのだ。

    源泉分離課税になる場合

    わが国の税制下において所得は、(1)利子所得(2)配当所得(3)不動産所得(4)事業所得(5)給与所得(6)譲渡所得(7)一時所得(8)雑所得(9)退職所得(10)山林所得、の10種類に区分される。そしてこれらのうち(1)~(8)の所得については、その合計金額に対して税金が課せられる。これを、「総合課税制度」という。

    ただし一部の所得については、他の所得と分離した上で一定税率の所得税が課せられ、これを支払う者が源泉徴収する場合がある。これを、「源泉分離課税制度」という。そして満期保険金の中には、この制度の対象となるものがある。保険料負担者と満期保険金受取人の異同に関係なく、「金融類似商品」に該当するものの満期保険金については源泉分離課税になるのだ。

    具体的には、5年以内に満期を迎える一時払養老保険などがこれに該当する。また保険期間が5年超の場合であっても、一時払養老保険や一時払個人年金保険、一時払変額保険、一時払変額個人年金を「5年以内」に解約した場合は同様の取り扱いとなる。

    満期保険金が源泉分離課税制度の対象となる場合、課せられる税率は所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%を合計した20.315%となる。納めるべき税金については生命保険会社が差し引いた上で満期保険金を給付するため、これを受け取った者が確定申告をする必要はない。