『NTTジャパンラグビー リーグワン 2022-23』第2節の決着戦だ。『NTTリーグワン2022-23』プレーオフトーナメントを睨んだ戦いでもある。クボタスピアーズ船橋・東京ベイ×横浜キヤノンイーグルス。9勝1分1敗・勝点43の2位S東京ベイと7勝2分2敗・勝点38の3位横浜Eが3月18日(土)・第12節で激突するのだ。
12月25日・昭和電工ドーム大分でのゲームは意外な幕切れとなった。主導権を握ったのは横浜Eだった。5分、CTBジェシー・クリエルのラインブレイクからパスを受けたWTBイノケ・ブルアが右サイドを疾走し、先制トライ。SO田村優が難しい角度のゴールを通して7-0。13分横浜EがPGで加点すると、25分にはS東京ベイのSOバーナード・フォーリーがPGを決めて10-3。39分には敵陣深くでスクラムを得たS東京ベイがSH藤原忍、フォーリー、WTB木田晴斗と素早くつないでトライ。シビアな角度のGは決まらず、横浜Eの10-8で前半を折り返した。
後半先にスコアしたのも横浜Eだった。45分田村のグラバーキックをWTBヴィリアメ・タカヤワがトライすると、田村が決してイージーではない角度のGをズバリ、17-8とリードを広げた。その後、横浜EのPG1本に対して、S東京ベイが3本のPGを決めて20-17と接戦に持ち込むと、残り10分で試合が大きく動いた。81分、横浜Eはゴール前での連続攻撃からSHファフ・デクラークがカットパス、右サイドでキャッチしたブルアはフォーリーのタックルを受けながらも、巧みにグラウディング。厳しい位置からのGをまたもや田村が決めて27-17。
ブレイクダウンで優位に立つ横浜Eが勝利に近付いたと思われたが、意外なところに落とし穴が待っていた。75分CTB立川理道のグラバーキックをタカヤワがゴール前でハンブル。この好機に途中出場のCTBライアン・クロッティがトライ、Gは失敗して27-22。最後のアタックを仕掛けるS東京ベイだが、6フェーズ目に横浜Eがターンオーバー。FB小倉順平が大きく蹴り返そうとしたところでまさかの転倒。降って湧いたチャンスに途中出場のPRオペティ・ヘルがゴール前に迫りオフロードパス。最後もオペティがピック&ゴーでインゴールにボールを運んで同点。棚ぼたの逆転勝利を目前とするも、正面やや右寄りのGを名手フォーリーがまさかの失敗。両軍ともモヤモヤの残る27-27のドローに終わったのだった。
両指揮官は次のように引き分けを評価した。「クリスマスプレゼントで順平にスパイク買ってやろうかな」とジョークをまじえた横浜E・沢木敬介監督が「スピアーズの強いFWに対して、前半しっかりタフに戦っていた。今日のゲームプランの遂行力は素晴らしかった。勝てなかったけれど、成長を感じている選手はいると思う。ただやはりここで勝ち切るチームじゃないといけない」と言えば、フラン・ルディケHCも「引き分けという結果に関しては、本当にチームの力だと思う。またイーグルスも賞賛されるべき、いい試合だったと思う。我々のリーダー、選手たちも褒めたい。チームをひとつにまとめ、今週ずっと一貫性を持って準備したことをグラウンドで表現してくれた。開幕戦とは違うスタイルで点数を取ることができたので評価したい」とポジティブな感想を述べた。
第10節はともにつまづいたが、第11節は両チームともボーナスポイントを含めて勝点5を獲得した。3月4日、埼玉ワイルドナイツとの首位攻防戦でノートライを封じられ、15-30で屈したS東京ベイは1週間後に静岡ブルーレヴズと対峙。
7分ラインアウトからモールを一気に押し込んで先制すると、13分もドライビングモールで前進し故意に崩されると、すかさずSH谷口和洋がインゴールに潜り込んだ。17分にGPを返されるも2分後フォーリーのパスを受けたCTBリカス・プレトリアスがカウンターアタック、最後はHOマルコム・マークスがインゴールにボールをねじ込んで19-3。その後22分にPGを返され、29分にはラインアウトからモールを押されるも、No8ファウルア・マキシがインゴール手前でボールホルダーをタッチへ押し出しピンチをしのいだ。しかし37分ゴール前での連続アタックでついにトライを許し、19-13でハーフタイムへ突入した。
後半も先にS東京ベイがスコアをマーク。46分ラインアウトから途中出場のオペティ、FLピーター・"ラピース"・ラブスカフニが距離を稼ぐと、再び谷口がインゴールへ飛び込んだ。53分静岡BRに1本返されるも、その2分後にすぐさまトライを奪い返し、63分にWTBハラトア・ヴァイレアが右サイドへ飛び込んで勝負あり。最終的には40-27で試合終了の笛を聴いた。
試合後、指揮官はこの日100キャップをマークした立川を「ひと言で表わすと、不死身のような選手。練習も試合もそのようにやっている。なので、大事な局面でもしっかりトライが取れるし、そのようにして一緒に勝ってきました。彼のリーダーシップにほかの選手も付いて来るし、ラグビーの知識もすごい」と称えた。
100キャップを記録した立川は静岡BR、そしてHO日野剛志との縁を口にした。
「ブルーレヴズのホームですごく歓迎していただき、本当に感謝しています。僕の『トップリーグ』のファーストキャップがヤマハ戦、100キャップをブルーレヴズ戦で達成できたというのはすごくいい縁だと思っている。日野選手とは彼が同志社の時に『関西大学リーグ』でやった経験もあり、一緒に100キャップを取れてすごくうれしい。日野選手のホームだったが、このようにセレモニーをしていただき、すごく感謝をしています」
立川は3月16日のメディア対応にも登場。横浜E戦に向けて、意気込みを語った。
「前回、大分でやった時も引き分けということで、拮抗した試合になるのかなと思っている。今週準備してきたところ、これまで反省してきたところを生かしていきたい。相手の9・10番のキッキングゲームを排除して自分たちのペースに持っていきたい。9・10番はすごくいい選手だと思うので、右、左の効き足も含めて、そこを予測しながらしっかりプレッシャーを掛けていきたい」
主将はこれまでの手応えと課題を口にした。
「コンスタントに得点できていると思う。パナソニック戦もあと一歩だったので、そこは評価している。あとは細かいラストパスとかていねいにやっていかないといけない。ディフェンスはちょっと失点が多くなっている。あとペナルティも多くなっているので、気を付けていきたい」
埼玉WK戦で得た教訓はこうである。
「パナソニック戦の学びはかなり多く、攻守の切り替えや大事な時間帯でのポイントの取り方、全員の反応も大事。日々の練習から意識して、相手がパナソニックではなくても、試合で意識してやっていくことが大事」
立川はプレーオフトーナメントを意識しても、順位までは意識していないと明かした。
「上位4チームに入れば、優勝する力はあると思う。『最初にパナソニックとやりたい』『サントリーとやりたい』『キヤノンとやりたい』『東芝とやりたい』というのはない。ただ今週キヤノン戦のために準備にしてきたことを出したいというだけ。あまり先を見て何位がいいというのはない」
同日、LOルアン・ボタもメディアの質問に答えた。ボタは2か月ぶりのスタメン復帰を楽しみにしていた。
「試合に出られてうれしいし、イーグルスとの再戦を楽しみにしている。イーグルスは昨季から調子はいいし、キーマンがいいパフォーマンスを見せている。多分FW戦になると思うし、自分としてはFW同士のぶつかり合いを楽しみにしている。イーグルスもFWのビッグパックでキャリーするなど、スピアーズと似たようなところがある。キーとなるデクラークや田村がいい形でチームをコントロールしてうまく戦っているイメージがある。スピアーズとしてはコントロールすべきところをコントロールしていけば、自然とスコアできると思っている」