第95回アカデミー賞授賞式が3月13日(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、製作・配給スタジオ「A24」史上No.1ヒットを記録した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞、監督賞と脚本賞(ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート)など7冠に輝き、下馬評通りの“圧勝”を収めた。

カンフーとマルチバース(並行宇宙)を融合させた異色のアクションエンターテインメント。経営難のコインランドリーを抱える中年女性が、突然「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒す」という使命を背負わされ、無限に広がるマルチバースを往来しながら、カンフーをはじめ、数々の能力を手にし、全人類の命運をかけた戦いに身を投じる。

【第95回アカデミー賞】『エブエブ』が作品賞をはじめ7冠で圧勝! アジアにルーツを持つ俳優&インド映画『RRR』が快挙
(画像=『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(C)2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.、『ぴあエンタメ情報』より引用)

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞に加えて、演技部門ではミシェル・ヨーの主演女優賞をはじめ、ジェイミー・リー・カーティスが助演女優賞、キー・ホイ・クァンが助演男優賞を揃って初受賞した。

主人公の主婦エヴリン・ワンを演じたミシェル・ヨーは、ハリウッドに進出したアジア人俳優の先駆者として、アジア人俳優初の快挙を達成。キー・ホイ・クァンは、エヴリンを未知なる世界に誘うキーパーソンである夫・ウェイモンドを演じ、ユーモアとシリアスの二面性に加えて、広東語、北京語、英語と“マルチ”言語を駆使し、唯一無二の人物像を生み出した。

主演男優賞に輝いたのは、『ザ・ホエール』のブレンダン・フレイザー。ダーレン・アロノフスキー監督(『レスラー』『ブラック・スワン』)の最新作で、フレイザーは恋人を亡くしたショックから逃れるため、過食を繰り返してきた結果、体重が272キロになってしまったチャーリーを演じた。自身の体重増量に加え、特殊メイクとファットスーツを着用し、かつての人気スターの面影を打ち消す“キャリア最高の演技”と称される熱演で、初ノミネートにして、オスカーを獲得した。

【第95回アカデミー賞】『エブエブ』が作品賞をはじめ7冠で圧勝! アジアにルーツを持つ俳優&インド映画『RRR』が快挙
(画像=『ザ・ホエール』(C)2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.、『ぴあエンタメ情報』より引用)

また、『RRR』(S・S・ラージャマウリ監督)の劇中歌「Naatu Naatu」がインド映画として初めて歌曲賞を受賞する快挙も。英国植民地時代の激動のインドを舞台に、男の友情と使命がぶつかり合う豪快なアクションエンタテインメント。この楽曲は、主人公の二人が超高速の「ナートゥダンス」を披露し、映画の大きな見せ場を作ったが、授賞式でも圧巻のパフォーマンスが披露され、この日一番の盛り上がりを演出した。

【第95回アカデミー賞】『エブエブ』が作品賞をはじめ7冠で圧勝! アジアにルーツを持つ俳優&インド映画『RRR』が快挙
(画像=『RRR』(C)2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.、『ぴあエンタメ情報』より引用)

ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァンらアジアにルーツを持つ俳優が、アカデミー賞の俳優部門で栄冠を勝ち取り、インド映画に目を向けると『RRR』に加えて、短編ドキュメンタリー賞では『エレファント・ウィスパラー: 聖なる象との絆』も受賞を果たすなど、アジア圏から世界に発信された作品群が、脚光を浴びる結果になった今年のアカデミー賞。同時に、『ハムナプトラ』シリーズの主演を務めるスターだったブレンダン・フレイザー、80年代を代表する人気子役だったキー・ホイ・クァンの華麗なる復活劇も印象に残った。

この日の授賞式には、キー・ホイ・クァン、監督賞候補のスティーブン・スピルバーグ(『フェイブルマンズ』)、そして作品賞プレゼンターのハリソン・フォードという『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』の関係者が一堂に会すという、“胸アツ”な風景もひとつのクライマックスになっていた。Netflixが製作した『西部戦線異状なし』が美術賞、撮影賞、作曲賞、国際長編映画賞の4部門を受賞したことも、見逃せない重要なトピックだ。