祥子さんをひとりきりにはできないと、大阪に呼び寄せようとするめぐみさんの気持ちはよくわかる。でもそれは、祥子さんが愛する五島での暮らしを諦めさせることであり、めぐみさんたちの生活を大きく変えることでもある。「迎える側に相当な覚悟がいると思うねんな」と、介護についてはっきり言ってくれる勝さん(山口智充)が、舞ちゃんの義理のお父さんになってくれてよかった。大事な人を支えたいのはやまやまだけど、気持ちだけではどうにもできない現実がある。この辺り、自分の親のこととか重ねて、めぐみさんたちと一緒に悩んでしまいました……。舞ちゃん一家が会社「こんねくと」を畳んで五島に移り住めばいいのでは、とかもちょっと思っちゃった、ごめん舞ちゃん。だってあの会社がどんなふうに東大阪で役立ってるか、いまだによくわからないんだもん。考えた末に、IWAKURAの社長業を章兄ちゃん(葵揚)に譲ることを決意しためぐみさん。今は祥子さんに大阪に来てほしい、でもいつかやっぱり戻りたくなったら、母娘ふたりで五島で暮らそう。そんな覚悟と愛情を示すめぐみさんと、それを受け入れた祥子さんの決意に泣かされました。

 東大阪での生活になかなか馴染めない祥子さんだったけど、貴司くんが選んでくれた本で読書の楽しみに出会い、夜には残り数ページになるほど夢中になって読み進めている。仕事を引退したあとのさみしさをよく知っている笠巻さん(古舘寛治)が届けてくれたたくさんのリンゴは、祥子さんをみんなが手伝って、おいしいジャムになった。幼い舞ちゃんに祥子さんが言ってくれた「できんなら、できることば探せばよかとぞ」の言葉が舞ちゃんから祥子さんに返され、その通りに新しいできることを探す祥子さんにゆっくり笑顔がもどって、ほっとしました。東大阪の職人さんが直してくれたラジオも、祥子さんとずっと一緒にいてくれる。子どもの舞ちゃんがジャム作りのお手伝いをする時、祥子さんは瓶の下にお皿を敷いて、こぼしても受け止められるようにしてましたよね。東大阪でのジャム作りでも同じように、今度は祥子さんのために、瓶の下に小さなお皿があった。自分の身近な人が思うように動けなくなったらどうしたらいいんだろうと、考えながら見た1週間ですが、ただあんなふうに、大丈夫だよと受け止める小さなお皿を差し出すだけでもいいのかもしれない。送別会で語られたように「あなたがいてくれるだけでありがたい」と伝えるだけでもいいのかもしれない。