第5話からは国家議員として永田町に食い込もうとする鷲津が描かれると見られるが、今後のドラマのカギを握る人物は誰になるだろうか。ここで2人の人物に注目したい。一人は、第4話で鶴巻から鷲津の出馬案を聞かされた際、戸惑った様子を見せた厚生労働大臣・鴨井ゆう子(片平なぎさ)だ。自身が夫を失った例を出して鷲津に国会議員になる上での覚悟を問いていたが、それは鷲津へのやさしい助言の形を取りながらも、政界から引き離そうとする警告のようでもあったからだ。

 そしてもう一人は、やはり秘書見習いの蛯沢だろう。蛯沢は、かつて運送会社を営んでいた兄・浩輝(森田甘路)が犬飼事務所へ融資の陳情をし、「善処する」との返事を得て喜んでいたものの、何ら動きがなく、そのまま過労死してしまっており、兄の死の原因が犬飼にあると恨んでいた。ゆえに蛯沢は犬飼への復讐心から鷲津に協力していくことを決めたが、第4話のラストシーンで、浩輝に応対し、そのまま対応を放置していたのが犬飼ではなく鷲津だったことが明らかに。この事実に蛯沢が以前から気づいていたのだとしたら、鷲津の大事な存在である泰生に手をかける動機が生まれてくる。

 しかし一方で、鷲津の行動にも疑念が生まれる。浩輝の応対中に犬飼が倒れたとの連絡が届き、速やかに対応しようとする仕事ぶりや、陳情に来た浩輝に「善処します」と笑顔で語りかける姿はいかにも鷲津らしいが、なぜ「議員に報告せず」の対応となったのだろうか。また鷲津は、蛯沢の犬飼に対する復讐心を見抜いていたにもかかわらず、なぜ彼を秘書見習いとして雇おうと思ったのか。蛯沢を事務所に迎えたのは泰生の事件の発生直後であり、事故として処理しようとする存在がいることすらまだ判明していない段階だったはずだ。そして蛯沢の兄の話を聞いても、自分が応対したことを蛯沢に明かさなかったのもなぜか。一度会った関係者の顔と情報は絶対に忘れない驚異的な記憶力を誇る鷲津であれば、自分が蛯沢の兄の陳情の応対をしたことを思い出さないはずがないのだが……。鷲津と蛯沢の関係は、今後の重要なポイントとなりそうだ。