老齢年金は、受け取り始める時期を自分で選ぶことができ、受給開始を早くすれば年金が減り、遅くすれば受け取れる金額が増えるという制度設計になっています。
年金を受け取るなら「少なく長く」と「多く短く」のどちらがいいのか、何歳で受取開始するのがいちばんお得なのか、迷うところかもしれません。今回は、年金の「損益分岐点」について考えてみましょう。
年金の受け取り開始時期は選べる
年金の受け取り開始時期は、原則65歳からです。ただし本人の希望に応じて変更可能で、本来より早く受け取る「繰上げ」は60歳から、遅く受け取る「繰下げ」は原則75歳までの期間から選択できます。
年金は、1ヵ月早く繰上げするごとに0.4%ずつ(最大24%)減額され、1ヵ月繰下げて遅くするごとに0.7%(最大84%)増額されます。
繰下げ受給は何歳まで生きたら得になる?
年金は何歳で受け取るのがいちばんお得か、それはその人の寿命、つまり何歳まで生きるか次第です。早々に亡くなってしまうなら早めに受け取っておいた方がお得ですし、長く生き続けられるなら遅めにスタートして年金額を増やした方が有利です。
ただ、何歳まで生きられるかは本人を含めて誰にもわかりません。こう言ってしまうと元も子もありませんが、年金の納付と受給でどれくらいの損得になったかは、最終的に亡くなるときまで判断できないのです。
しかし目安はあり、「年金の損益分岐点(損か得かが別れるポイント)」は平均寿命まで生きるかどうかです。厚生労働省の発表によれば、2021年の平均寿命は男性81.47歳、女性は87.57歳です。
年金は人口統計などを踏まえて計算・設定されています。そのため、平均寿命より早く亡くなってしまうようであれば早めに受け取った方が得、平均寿命より長く生きるようであれば遅く受け取った方が得です。
受け取り開始が65歳と70歳の場合を比較すると、70歳の方が得になるのは「81歳」以上まで生きたときです。65歳と75歳を比較すると「86歳」、70歳と75歳だと「91歳」が損益分岐点になります。