でも、久留美ちゃんに関しては、八神とは別れて正解だと思うんですよねえ。八神、舞ちゃんに「若い医者を紹介します」とか、うめづを「こんなところ」って言ったりとか、「お父さんさえちゃんとしてくれたら」「久留美ちゃん、今のままやったら不幸なまんまやんか」とか……言葉のひとつひとつに、「下々の人たちに優しくしてあげたい!」みたいな、恵まれて育ったことに無自覚な人特有の、無邪気な見下しの匂いがする。柏木も同じ匂いがしていて、あのまま付き合ったら舞ちゃんが受けるはずだった「身分違いの恋」的な朝ドラ主人公っぽい試練を、久留美ちゃんが代わりに引き受けてしまったような流れ。しかし無自覚見下し夫だけでなく、あのキツいお母さんと結婚をやめろと説得してくるお父さんが義理の親になるなんて、つらいこと多めの朝ドラでもあまりないような、不幸てんこ盛り人生すぎませんか。朝から見るにはちょっとヘビーだし、八神とは別れてよかったと心から思うけれど、それとは別に「お父さんがちゃんとしてくれないと久留美ちゃんが不幸なまんま」という彼の発言が間違いじゃないのがまた困る。お父さんはラグビー選手を辞めてずいぶん経つのにまだアルバイト、せめて家事はやってるのかと思ったら、脱ぎ散らかした服を片付けるのも朝食を作るのも看護師として忙しい久留美ちゃんって、意味がわからない。久留美ちゃんは、金持ちの医者の妻でもお父さんを世話し続けるいい娘でもなく、自分自身として幸せに生きる人生を選んでほしい。そういう変化をしてくれないかなあ。

 もう1人の変われない人、貴司くん。「歌集売りたいなら、作者の顔が大事よ?」と編集者に言われて黙ってしまう、その気持ちはわかる。わかるけれど、多くの人に彼の歌を届けたい、そのためのベストな方法を選ぼうとする編集者も正しいと思う。お互いの気持ちをすり合わせて、ちょっとだけ変化して、ちょうどいいところを探せたらいいんですけどね。あと、貴司くんはあのふんわりした雰囲気のままでも、超すてきな歌人として人気が出ると思うんですけどね。