国土交通省は3月27日、1月1日現在の公示地価を発表した。住宅地は横ばいから10年ぶりに上昇に転じ、商業地は3年連続の上昇で騰勢を強め、工業地も2年連続の上昇だ。
三大都市圏(東京・中京・近畿)は、特に商業地が堅調で、いずれのエリアも3%以上の上昇率を見せる。絶好調を続ける四大中核都市(札幌・仙台・広島・福岡)以外の地方も、最近では復調の気配が濃厚だ。
「駅から8分」が売れる限界
過去最低レベルの完全失業率(2.5%前後で推移)、政府の後押しによる3%賃上げなど、雇用・所得を巡る環境は好転している。住宅ローン金利も10年固定で1%を切る水準で推移する。こうした要因が、住宅地地価の追い風となっている。
一方で同じエリアでも、利便性によってばらつきが出ている。三大都市圏では平均で0.7%の地価上昇だが、駅から500m以内の地点では1.7%の上昇だ。一方で2km圏外はマイナスに沈んだ。
マンション販売も、業者間の競争は熾烈度を増している。販売業者も「駅から近ければ売れるのはわかっている」のだ。ところが、用地を仕入れられない、どうしても大手デベロッパーに力負けしてしまう。
客の見る目は、厳しくなっている。かつて、マンションの坪単価は駅から1分離れるごとに8千円下がると言われてきた。今では倍の1万6千円だ。業者の間では、「駅から8分」が売れる限界とされる。圏外の用地には仕入れ担当も食指を伸ばさない。
駅近で用地を丹念に集めて土地効率の高いタワマンを建てるとなると、技術力も資金力も必要だ。最近では、メジャー7(住友不動産・野村不動産・三菱地所・東急不動産・東京建物・大京・三井不動産)の施工割合が50%を超える。かつての3倍の水準だ。
利便性重視の傾向は、地方も同様だ。平均ではマイナス0.1%だが、1km圏内ではプラスを維持している。
全国下落率ワースト10のうち2地点が横須賀市
1970年代に東京のベッドタウンとして開発が進んだ横須賀市の住宅地は、全ての地点で地価が下落した。全国下落率ワースト10のうち2地点が同市内だ。人口減少も歯止めがかからず、将来に明るい展望が開けない。
横須賀市だけではない。都心からのアクセスが良くない、周縁部の地価は低調だ。横浜市に隣接する三浦市や千葉県我孫子市も人口減となっている。一方で、都心から30分に位置する川口市は、人口が60万人を超え、地下も上昇している。交通の便が明暗を分けた格好だ。
インバウンドの恩恵 ニセコ地域は3割上昇
地価上昇は、地方都市にも波及し始めている。上昇率プラスの都道府県が住宅地では、11から16へ、商業地では18から21へ増加した。地方では、九州地方の健闘が目立つ。福岡の好調ぶりは相変わらずだが、住宅地は熊本・大分・佐賀が、商業地では長崎・大分・熊本がプラスに転じた。
日銀の超低金利政策の影響もあり、土地投資の資金が地方都市にも流れ込んでいる。九州でも地価が上昇しているのは、県庁所在地の駅周辺などが中心だ。佐賀県でも、福岡に近い鳥栖市や佐賀市の地価が上昇、一方で伊万里市などの西部地域は地価反転の見通しが立たない。
北海道は、商業地が2年連続で上昇、住宅地もプラスに転じた。住宅地の地価上昇で全国1位は道内の倶知安で、上昇率は3割以上に達する。
ニセコリゾートに所在する倶知安では、リゾートで働く従業員住宅の建設ラッシュが地価を押し上げた。そのニセコリゾートでは、全室1億円超えのコンドミニアムが完売した。購買層は、オーストラリアや香港の富裕層だ。
好調な地価だが今後はどうか。2020年までは上昇が続くとの予測が多い一方で、懸念もある。仮に超低金利政策が変調を来せば、土地投資に暗雲が生じる。とくに外国資本は逃げ足が速いだけに要注意だ。
文・ZUU online 編集部/ZUU online
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