普通に過ごしてる人たちが一番ドラマティック

――3月1日リリースの新曲「オトナの時間」は、「AWAKE」もそうだったように、聴く人に呼びかけるようなメッセージ・ソングのような印象を抱きました。

 「AWAKE」もそうなんですけど、“大人になることがつまらない”って子どもに言わせたくないなって。自分の周りがお母さんになったりお父さんになったり、また会社でどんどん立場が上になったりすると、みんなすごく制限がかかったり不自由になっちゃって身動きできなくなってる感じするんです。でも子どもってそういう姿を見て大人になる想像をしていくじゃないですか? 大人が一番楽しくて、イケてて、わくわく遊んでる姿を子どもに見せられるようにしようと思ったら、大人を楽しくさせなきゃな、と。大人の遊べる遊び場を何か作りたいなっていうのはずっと去年から考えていて、だから歌詞のメッセージも、お母さんだから我慢しなきゃダメとか、社長だから余計なことはできないとか、そういったところを取っ払おうというものなんです。「大人の解放」というのが自分のなかでテーマとしてここ最近あったんですよね。

――今年2月に第一弾が開催された〈OTOGRAPHY〉も「大人が遊ぶ」というのがテーマにあるかと思いますが、このイベントをやろうと思ったのは?

 ここ最近音楽と並行してモデル業のお話をいただくようになりファッション業界の方々と触れ合う機会が増えて、音楽とファッションがリンクするシチュエーションに遭遇することが増えたんです。ファッション業界が音楽業界にアプローチすることで、音楽を好きな人とか音楽の畑にいた人たちが、それまで知らなかったファッションのことを知るようになって化学反応が起きるっていうことを私自身すごく体感してて。〈OTOGRAPHY〉はその逆算というか、逆に音楽を、音楽じゃない畑の人たちとコラボレーションさせたら面白いんじゃないかな、今までにないものができるんじゃないかなと思って。

 あと自分の曲作り自体が、自分のことを書くっていう感覚が元々あまりなくて。誰か対象がいて、そこに向けて書いてることが多いんです。万人にというより、すごく身近な人だったり、“この人がちょっと楽になる曲を作ろう”っていう曲作りだから、人のドラマを書くことが自分にとってはナチュラルな制作で。〈OTOGRAPHY〉はそういう意味で、全然違う畑の、会社で働いてる人とかブランドをやってるデザイナーとかお母さんとかお父さんとか、そういう人1人1人にスポットを当てて曲を作る。で、その作る過程をみんなを巻き込んで見せたら面白いんじゃないかなって思って。音楽がこんなふうに人の生活にすごく近いところでできてるんだってことを伝えたいんです。普通に過ごしてる人たちが一番ドラマティックだったりするし、みんなにドラマがあるから、そこをピックアップしたいんですよね。シンガー・ソングライターだからできることだと思うし。