猫が罹患する病気の中で、その発症率が非常に高いのが腎不全です。
しかもそれは、初期段階では目に見える症状があまりない、恐ろしい病気。
だからこその予防法と、万一の際の症状、治療法についてご紹介します。
1.腎不全ってどんな病気?
猫にとって腎臓は、
- 体の中で不要になった老廃物や毒素を尿として排泄する
- 血圧を調節する
- ナトリウムやカリウムなど、血液中のイオンバランスを保つ
- 血液(赤血球)を作るためのホルモンを分泌する
などの働きを担い、生命を維持するために非常に重要な臓器の1つです。
この腎臓の機能が、何らかの原因で低下してしまう病気が腎不全。
腎不全には「急性腎不全」と「慢性腎不全」があり、特に「慢性腎不全」は、猫における発症率が非常に高いといわれています。
慢性腎不全・急性腎不全の違い
【急性腎不全】
数時間から数日ほどの、とても短い期間で腎機能が低下します。急激な尿量の減少や、食欲不振、下痢、嘔吐、脱水などの症状が見られ、重症になると痙攣や体温低下などを起こし、命を落としてしまうケースも。一刻も早い救急治療が必要となります。
【慢性腎不全】
数ヶ月~数年ほどの長い時間をかけて、徐々に腎機能が低下していきます。初期段階ではほとんど症状が現れないため、早期発見が難しい非常に怖い病気です。
2.猫の腎不全でみられる症状 多飲多尿は最初のSOS?
実は腎臓は「沈黙の臓器」ともいわれるやっかいな臓器。
何らかの異常が起こっても、なかなか目立った症状が現れないのです。
実際、猫の腎臓病の初期段階では飼い主さんは異変に気付きづらく、何かの症状が出る頃には次のステージへ進んでしまっているケースが少なくありません。
そんな中でも、最初のSOSとも言える症状が「多飲多尿」。
腎機能の低下が進行すると尿を濃縮させることができなくなるため、色の薄い尿を大量に排泄します。また、尿量が増えるため水分不足にもなり、水を飲む量が増えるのです。
以前と比べるとたくさん水を飲み、おしっこの回数も増えたと感じることがあったら、もしかしたらそれは、腎不全のサインかもしれません。
さらにこんな症状が出たら、進行している可能性大
初期段階では気付きづらい腎不全。
「多飲多尿」の症状が出る頃には、すでに腎機能の50~75%ほどは失われているといわれていますが、さらに進行すると、このような症状が見られるように。
ここまで進行していると、腎機能としてはすでに90%ほどが失われていると考えられます。
最初のSOSは「多飲多尿」
↓
さらに症状が進むと
- 食欲の低下
- 貧血
- 体重の減少
- 口内炎・口臭
- 嘔吐
- 毛つやが悪くなる
末期症状は?
腎不全の末期になると、「尿毒症」と呼ばれる症状が見られます。 腎機能はほぼ機能しておらず、命の危険にも及びます。
さらに症状が進行
↓
末期症状
- 痙攣
- 呼吸が浅くなる
- 意識レベルの低下
- 神経障害や消化器障害
3.猫の腎不全の原因は?
猫の腎不全の原因として、現在のところはっきりとわかっていることはありませんが、細菌やウイルスの感染、歯肉口内炎による炎症性蛋白の分泌、先天的・遺伝的なものなどが考えられています。
また近年では、東京大学大学院教授である宮崎徹先生の研究により、「AIM」という血液中のタンパク質が猫の腎不全の原因に大きく関係していることもわかりました。
本来、体内の”ゴミ掃除機能”を強化する「AIM」。ところがネコ科の動物は、このAIMが先天的に機能しておらず、体内にゴミが貯まり続け腎臓の機能が悪化、やがて腎不全に陥ってしまうといわれています。
腎不全になりやすい猫は?
特定の猫種はありませんが、高齢の猫の発症率は高い傾向にあります。