ドラマ版『大奥』は、話数の都合上さまざまなエピソードの改変を行いながらも、このメッセージを細やかに伝えている。むしろ原作よりもエピソードが少ない分、大奥に入れられた男性の悲劇よりも、女性将軍たちの生き様を描くことを優先している印象すらある。たとえばドラマ版では、将軍・吉宗(冨永愛)が馬に乗るシーンを追加したり、有功(福士蒼汰)の還俗のエピソードを削り家光(堀田真由)の過去のエピソードを丁寧に描くなどの工夫がなされていた。そのような改変は女将軍のキャラクターを際立たせる。そして視聴者にとっても、女将軍たちの生き様がより伝わりやすくなっているだろう。

 第2話以降の家光編においても、大奥に連れて来られた有功側の物語よりも、家光のエピソードのほうが丁寧に描かれている印象がある。それはドラマ版の制作者たちが、おそらく「将軍にならざるを得なかった女たちの悲しみを見せる物語」としてこの物語を認識しているからではないだろうか。

 今後、家光が将軍として覚悟を決め、そして暴君として歴史に名を馳せる綱吉(仲里依紗)の物語が始まる。さらにその後、原作で描かれた、治済篇や幕末篇といったエピソードはどのように描かれるのか。そして大奥の悲劇は最終的にどのような形で視聴者へ伝わるのか。原作ファンとしても、今後を楽しみに待ちたい。