セックスレス夫婦が主人公のドラマ『夫婦円満レシピ~交換しない?一晩だけ~』(テレビ東京系、水曜深夜0時30分~)でも描かれている、“夫婦交換”=スワッピング。

カップルのマンネリ解消に有効だといいますが、はたしてその効果は……? 夫婦関係についての著書多数で、スワッピングの取材経験も豊富な、亀山早苗さんが解説します(以下、亀山さんの寄稿)。

◆レスのまま、夫婦交換だけ盛り上がるママ友夫婦

仁科志保(佐津川愛美)と浩介(千賀健永)夫婦は、セックスレスを解消するために夫婦交換を実践し、その効果を満喫していた。

そんなとき、すべてを知られた親しいママ友の森尾裕子(橋本マナミ)に「どうしても」とせがまれて、森尾夫妻と夫婦交換をすることになる。裕子の夫である真司(黄川田雅哉)は志保を気に入り、妻の裕子とはレスのまま、どうしてももう一度夫婦交換をしてほしいと浩介に頼み込む。

裕子を救いたい志保たちは、夫を入れ替えて一晩、それぞれの家で過ごすことにした。ところが姑に「とにかく跡継ぎを」とプレッシャーをかけられている裕子は、「夫に愛されること」という当初の目的を逸脱しはじめる。一方の真司にも、なにやら秘密がある様子だ。

◆グループセックスを機に破綻(はたん)するカップルも

夫婦交換を実践している人たちはいるが、その目的は何だろうか。私個人が知る限りでは、「もう一度、夫婦として男女の感情を取り戻したい」「夫婦だけの秘密をもつことで愛情を確認したい」が大半だ。だからこそ、40代後半以上の年配者が多くなる。

だが、いわゆるグループセックスと呼ばれる集まりには、もっと若いカップルも多いし単独で参加する人もいる。

こういうグループの掟は、とにかく女性の意志を尊重すること。女性が嫌だと言ったらすぐにやめる。カップルで来ている女性に興味を抱いたなら、女性本人とパートナーの男性にも許可を得ることなど、主宰者の判断でさまざまなルールがある。

夫婦交換のイメージ画像
写真はイメージです(以下同じ)
「夫婦ではなく、30代くらいまでの恋人同士の場合、まだ自分のパートナーへの信頼感がじゅうぶんでないこともあって、グループセックスを機に関係が破綻することも多いんですよ」

その道のベテラン男性はそう語る。ふたりの気持ちがしっかりしていない限り、こういった「遊び」に手を出さないほうがいいというのが彼の持論だ。

◆「ピル飲んでるから」避妊具をつけなかった女性

「以前、かなり奔放なアラサー女性に出会ったことがあるんです。恋人と一緒に来ていて、恋人は彼女が他の男性としているところを見るのが好きという志向があった。

そのパーティでは避妊具をつけるのが鉄則だったのに、彼女は陰で『ピルを飲んでいるから大丈夫』と言っていた。

彼を嫉妬させたかったのか、単純にモテたかったのか。それに乗せられて何人かがナマで射精してしまったらしいんです」

妊娠検査薬
その後、彼女は妊娠が発覚、一緒に来ていた恋人に去られたと主宰者に話して泣いていたという。

◆安心安全にパーティを楽しむためには

こういう場所ではルールを守らなければ追放される。当然、ナマでした男性たちも出入り禁止となった。妊娠と性感染症を防ぐためには、キスやオーラルはしないと取り決めているところもある。

安心安全に楽しむためには、ルールが厳しいに越したことはないのだ。

◆愛情とセックスは別、スポーツとして楽しんでいたのに

恋人との関係と、他者とのセックスは両立するという考えのもと、カップルでグループセックスに参加しているカナコさん(仮名・32歳)は自身の経験を語ってくれた。

幸せなセックス
「私たちは、『ふたりの愛情とセックスは別だよね』と話し合っていました。だから一緒にグループセックスにチャレンジ、他の人とすることで私たちの愛情はより緊密になり、セックスはセックスとしてスポーツのように楽しんでいたんです。

でも半年ほどたったとき、私がそこで出会った人と恋に落ちてしまった。私たちは結婚しているわけではないので、自分を止めるものがなかった。苦しくてたまりませんでした。恋人と別れて、その新たな人とつきあいたいという願望が強くなってきて……」

◆恋人に打ち明けて3人で話し合い、意外な結末に

「苦しすぎたので恋人に打ち明けたんです。そしてその新たな人と3人で話し合いました。結局、新たな人は私と恋人同士という枠組みでつきあう気はないということがわかって、それもつらかったけど……」

さらに数ヶ月たち、カナコさんはその新たな人への恋心が、一過性の情熱だったことに気づいたという。そして、変わらず愛してくれていた恋人への気持ちを取り戻した。

◆他の人とすることで、リスクを背負うのは確か

「セックスすることで恋心が生まれてしまうこともある。女性も、慣れ親しんだ恋人より新しい男性のほうがよく見えるものなのかもしれません。でもそこで勇み足で恋人と別れてしまったら、きっと後悔していたでしょうね。

私たちには信頼関係があったから、苦しい胸のうちを恋人に話すことができた。そして3人で冷静に話すこともできた。自由に他の人とすることで、大きなリスクを背負うのは確かだと思う」

話し合い
それでもふたりはコロナ禍の合間を縫って、グループセックスへの参加を続けている。今は「刺激」を求めることに主眼がある。

◆不安と危機意識があるから、恋人をより大切に思う

「前は私たちの愛情は、それぞれが他者とセックスをしていても変わらないかどうかを試していたのかもしれません。今はふたりの関係はもう変わらないという自信がある。だから刺激を自分たちの関係にフィードバックさせるため、あるいは他の恋人たちを知るために参加しているような気がします」

さまざまな欲望や感情が渦巻く世界、「自分たちの愛情に自信があるといっても、一方で、いつどうなるかわからない不安もある」とカナコさんは言う。誰かに取られるかもしれない、この関係が終わるかもしれない。そんな不安と危機意識があることで、目の前の恋人をより大事にしたいと思うようになったそうだ。

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio