４．ボーダー・コリーの飼育のポイント
ボーダー・コリーに限らず、子犬にとって大事なことの一つが社会化です。
生後3週齢～12週齢にかけての「社会化期」にある子犬は好奇心が旺盛で、いろいろな物事を吸収しながら犬として生きていく上での基礎を築いていきます。
特にこの時期には子犬にとってトラウマにならない範囲で、人や物、音、環境などいろいろなものに慣らすようにしましょう。
物覚えの早いボーダー・コリーはしつけのし甲斐がある犬種ですが、それだけ精神的刺激を必要とするので、ゲーム性のある遊びなど取り入れてあげたいものです。
一点、特に「アイ・ドッグ」（目の力で家畜をコントロールする犬。ワーキングタイプに多い）の資質が強い犬では、賢いがゆえに、逆に飼い主さんをコントロールしてしまうようなこともあります。
わがままを許してばかりいたり、愛犬に対する態度に一貫性がなかったりすると、彼らは“飼い主さんコントロール術”を編み出してしまうかもしれません。ですから、しつけには真摯に取り組みましょう。
５．ボーダー・コリーのかかりやすい病気・ケガ
ボーダー・コリーは健康的な犬ですが、やはり気をつけたい病気もあります。
たとえば、関節疾患や脳の病気、眼疾患、歯のトラブルなど。
歯の問題は軽く見られがちですが、歯周病の他、硬い物を齧っていて歯が折れる（破折）こともあるので、日々の健康管理の一環として歯や口の中もチェックするようにしましょう。
なお、ボーダー・コリーは運動能力が高いのに加え、急旋回もなんなくこなす身体能力があり、関節を傷めるリスクがあるため、運動前後には軽いストレッチや関節のチェックをすることをおすすめします。
また、子犬の時期はまだ体が十分に成長しきっていないため、運動をさせ過ぎると関節を傷めてしまうこともあるので、運動量はほどほどに。
若齢～成犬
子犬～若い犬では、特に以下のような病気・ケガには気をつけましょう。
股関節形成不全
股関節に緩みが生じ、歩行に支障が出る運動器疾患。7割が遺伝的要素、3割が環境的要素に関係すると言われ、生後1年未満で発症することが多い（※8, 9）。肘関節異形成
肘関節を構成する骨（上腕骨・橈骨・尺骨）の成長に異常が生じ、歩行異常が見られるようになる。生後5ヶ月～10ヶ月頃に発症することが多い。コリーアイ（コリー眼異常／CEA）
眼の形成に関連する遺伝子の異常により、網膜や脈絡膜、強膜などに低形成や欠損が生じる遺伝性眼疾患。生後4ヶ月～1歳での発症が多い。ボーダー・コリーやコリー、シェットランド・シープドッグなど牧羊犬系の犬が好発犬種とされる。熱中症
子犬は体高が低い分、地面からの反射熱を受けやすく、体温調節もまだ十分にはできないので、熱中症になりやすい。
成犬〜高齢犬
そして、成犬～高齢犬では、以下のような病気に注意が必要です。
セロイドリポフスチン症（CL）
脳内の老廃物を分解・除去する働きのある酵素が遺伝的に欠けていることで神経障害が起こる病気。ボーダー・コリーは遺伝的にこの病気を発症することがあるが、現在では遺伝子検査ができるようになっている。てんかん
脳の神経細胞の働きに一時的な障害が生じて発作が起こる。遺伝的要因が考えられるものの、原因が不明の特発性てんかんと、他の病気や外傷などに続発する症候性てんかんがある。腫瘍・癌
高齢になるほど腫瘍・癌のリスクが高まる。認知症
認知症に関連する行動が一つ以上見られたのは、12歳の犬で53％、13歳で70％、15歳では86%という調査報告もある（※10）。食事やサプリメントで認知症予防を心がけるとともに、シニア期に入ったなら愛犬の行動にも注意を。
6．ボーダー・コリーの平均的な寿命は？
ボーダー・コリーの平均寿命は12歳～15歳程度と言われます。
参考までに、一般社団法人 東京都獣医師会霊園協会がペット霊園のデータ（2012年～2015年、1万3,516頭）を基に犬の寿命を調査した結果では、ボーダー・コリーの平均寿命は12.7歳でした（※11）。
７．まとめ
ボーダー・コリーはシープドッグを代表する犬種の一つです。羊を駆る能力は探知犬や捜索救助犬としても生かされ、ドッグショーでドッグダンスやトリックを披露する犬も少なくありません。
彼らはアクティブで、“何かをすること”が大好き。家の中に閉じ込めていたならば、せっかくの良さを潰してしまうことになるでしょう。
犬の飼育経験があり、スポーツやアウトドアなど犬と何かを楽しみたい人により向く犬種です。
人によってはボーダー・コリーをスーパースターと呼びます。あなたにとってのスーパースターになるよう、どうぞ慈しんで彼らとお暮らしください。
（文：犬もの文筆家＆ドッグライター 大塚 良重）
※犬は生き物であるため、寿命や性格・気質、行動、健康度などには個体差があります。
【参照元】
（※1）THE KENNEL CLUB「Border Collie
（※2）FEDERATION CYNOLOGIQUE INTERNATIONALE (AISBL)「BORDER COLLIE」
（※3）一般社団法人 ジャパン ケネル クラブ「ボーダー・コリー」
（※4）AUSTRALIAN NATIONAL KENNEL COUNCIL LTD「Border Collie」
（※5）AMERICAN KENNEL CLUB「Border Collie」
（※6）ELINOR K. KARLSSON et al. Ancestry-inclusive dog genomics challenges popular breed stereotypes. SCIENCE•29 Apr 2022•Vol 376, Issue
（※7）公益社団法人 日本獣医師会「家庭飼育動物（犬・猫）の診療料金実態調査及び飼育者意識調査調査結果（平成27年）」
（※8）日本動物遺伝病ネットワーク「股関節形成不全とは」
（※9）一般社団法人 ジャパン ケネル クラブ「遺伝性疾患の発生リスクが高いと考えられている犬種」
（※10）水越美奈、松本千穂、脇坂真美「高齢犬の行動の変化に対するアンケート調査」（動物臨床医学26[3] 119-125, 2017）
（※11）一般社団法人 東京都獣医師会霊園協会「犬の寿命調査／家のワンちゃんどのくらい長生きするの？ どのワンちゃんが長生きなの？」
参照：デズモンド・モリス「デズモンド・モリスの犬種事典」（株式会社 誠文堂新光社、2007）
提供・犬・猫のポータルサイトPEPPY（ペピイ）
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