ハーダー界の花形と言っていいボーダー・コリー。
作業能力、知性の高さともに定評があり、今でもシープドッグとして牧場や農場で働く犬もいます。家庭犬としては安定した人気を誇りますが、賢いがゆえに飼い主さんのほうが翻弄されてしまうこともあるのは注意のしどころです。

そんなボーダー・コリーを迎えるには?

1.ボーダー・コリーの歴史

原産国:イギリス

犬種名の「ボーダー」は、イギリスのスコットランドおよびイングランド、ウェールズの“辺境”地帯に由来しています。つまり、ボーダー・コリーはこの一帯で牧羊犬として活躍していたわけです。

また、「コリー」は黒い斑模様のあるコリー種という羊に由来するもので、その羊を駆り集める犬であったことに由来するとの説が有力ながら、ゲール語の「Collie(役に立つ)」に由来するという説もあります。

古くはローマ帝国(紀元前753年~476年)がイギリスに侵攻した折、同行させた牧畜犬が次第に土着し、後にヴァイキング(8世紀末または9世紀~11または12世紀)がイギリスに持ち込んだトナカイ用の牧畜犬(スピッツタイプ)と交雑することでボーダー・コリーの基礎がつくられたと考えられています。

現在のような姿になったのは19世紀末頃のこと。源流を辿れば、たいへん歴史のある犬種ということになります。

2.ボーダー・コリーの特徴

シープドッグの中でも作業能力と運動性能に秀でているボーダー・コリーは、長らくビジュアルよりも作業能力が重視され、広く人々に知られることもありませんでした。

世間にその存在と優秀さが知られるようになったのは、1873年にシープドッグ競技会が開催されるようになってからのこと。1976年まではイギリスのケネル・クラブ(KC)によるスタンダードもなく、国際畜犬連盟(FCI)の公認を受けたのも1987年と意外に遅い“デビュー”でした。

家畜を誘導する際には、頭部を深く下げ、にじり寄るように移動する様は、この犬種独特のスタイルです。

ボーダー・コリーの容姿

ボーダー・コリーは中型の牧羊犬ですが、体高と体重は犬のタイプや国によって若干ばらつきがあります。

原産国イギリスのケネル・クラブ(KC)や国際畜犬連盟(FCI)、ジャパン ケネルクラブ(JKC)は、スタンダード上、体高53cmを理想とし、メス犬はやや小さいとしています(※1, 2, 3)。

一方、ボーダー・コリーが多く飼育されているオーストラリアのオーストラリアン・ナショナル・ケネル・カウンシルでは、オス犬が48cm~53cm、メス犬は46cm~51cm(※4)。

アメリカン・ケネル・クラブの場合は、オス犬が48cm~56cm、メス犬は46cm~48cm(※5)となっており、トータルすると、ボーダー・コリーの体高はオス犬で48cm~56cm、メス犬では46cm~53cm程度ということになるでしょう。

体重は、オス犬で17kg~25kg、メス犬では14kg~20kg程度と個体差によって少々幅があります。
ボーダー・コリーは、いかにもスピーディで軽やかな動きを感じさせるバランスのとれた体つきをしており、筋肉に富んだ脚は素早く方向転換をすることも可能です。

耳は半立ち耳または立ち耳で、尻尾は垂れ尾。半立ち耳は柔和な印象を、立ち耳は凛々しさを感じさせます。

被毛はダブルコートで、毛がやや長いタイプと短いタイプがありますが、一般的には毛の長さによってロング、ミディアム、ショート、スムースに分けられることがあります。
毛色は白が優勢でない限り、様々な色が認められており、ブラック&ホワイト、レッド&ホワイト、トライカラー、ブルーマール、セーブル、ゴールド、ライラック、クリーム、シールなど30種類以上はあると言われ、それぞれに違った魅力があります。

また、ボーダー・コリーにはワーキングタイプとショータイプがおり、前者はやや細身で小柄、被毛は短めの犬が多く、実働やスポーツ向きで、後者はやや大きく、ぽっちゃりタイプで、被毛は長めです。

ボーダー・コリーの性格・気質

ボーダー・コリーはたいへん知性が高く、トレーニングへの反応も高いことは彼らがシープドッグとして活躍する姿を見れば一目瞭然です。繊細で、鋭く、警戒心もあり、家族には深い愛情を示す一方で、見知らぬ人や子ども、他の犬には少々距離をおくようなところもあります。

長きにわたり、羊飼いとともに繊細な作業をし、信頼を得る働きをしてきただけに、ワンマンドッグとは言わずとも、飼い主さんと強い絆を結ぶことができる犬と言っていいでしょう。

もっとも、犬種にはそれぞれ傾向的な気質や特性、行動というものはありますが、この犬種だからこういう性格をしていると断言できるものではありません。
最近、犬の行動特性は遺伝と関連するものの、犬種との関連はわずか9%にすぎないという研究結果が発表されました(※6)。
つまり、犬種から行動特性を予測するのは難しく、個々に違いがあるということ。

行動は気質・性格とも関係します。それを考えるならば、代々受け継がれたボーダー・コリーの良さを引き出してあげられるかは、飼い主さんの育て方、接し方や、環境、経験などが大きく関係するということでしょう。

3.ボーダー・コリーを迎える方法

【獣医師監修】ボーダー・コリーの性格や飼い方のコツ、寿命、なりやすい病気まで全部紹介!
(画像=『犬・猫のポータルサイトPEPPY(ペピイ)』より引用)

ボーダー・コリーを迎えるには、主にペットショップ、ブリーダー、動物保護団体・動物愛護センターなどのルートがありますが、その前に知っておきたいこともあります。
それを理解した上で、入手先を決めましょう。

1.「動物の愛護及び管理に関する法律」により、販売者は対象となる動物を直接見せ、飼育方法などについて購入者と対面した上で文書を用いて説明しなければなりません。これを怠る販売者はNGと言わざるを得ません。

2.2022年6月1日より、販売される犬猫にはマイクロチップ装着が義務化されました。犬を購入後は、飼い主さん自身の情報へと変更登録する必要があります。

詳しくはこちら⇒環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室「令和4年6月1日から開始するマイクロチップ登録制度に関する飼い主の方向けQ&A」

ボーダー・コリーの入手先

入手先1ペットショップでボーダー・コリーを探す

ペットショップで販売される犬は、契約ブリーダー、自社(自家)繁殖の他、多くが生体市場経由で仕入れられた子犬です。
現在、動愛法の改正により、生後56日(8週齢)に満たない子犬子猫は販売できなくなっているので(特例として天然記念物指定を受けている日本犬の場合は生後49日)、子犬の生年月日は確認するようにしましょう。

子犬を選ぶ際には、できれば親犬を見ることができると理想的ですが、ペットショップでは稀と言わざるを得ません。

入手先2ブリーダーからボーダー・コリーを購入する

真摯なブリーダーは特定の犬種にこだわりをもって繁殖しており、その犬種についての知識も豊富です。
子犬の価格については、ブリーダー登録サイトは別として、ブリーダーのホームページ上では公開していないケースが多いため、直接問い合わせる必要があります。

予約をすれば見学も可。親犬を見られる率が高い点はプラスポイントです。
なお、場合によっては子犬が産まれるまで数ヶ月待たなければならないこともあります。

入手先3ボーダー・コリーの里親になる

行き場のない犬はまだまだ多くおり、そうした犬を迎えるのも一つの選択肢です。この場合、すでに成犬であることが多く、老犬である場合も珍しくありません。

入手先としては動物保護団体や各自治体の動物愛護センターなどがありますが、里親になるには一人暮らしや65歳以上の人は不可、その自治体在住者のみなどそれぞれ条件が設けられていることがあるのでよく確認してください。

犬は子犬から飼わなければならないということはありません。成犬でもしつけ直すことは可能です。何より、辛い思いをした分、人の愛情に飢えている犬も多いもの。時間をかけて気持ちが通じ合う一瞬が訪れた時の嬉しさは代えがたい宝となることでしょう。

ボーダー・コリーと暮らしたいと思った時、保護犬の里親になる選択肢も考えてみてはいかがでしょうか。

ボーダー・コリーを迎えるときの費用相場は?

現在、子犬の価格は以前に比べて大幅に高騰しています。したがって、決して安い買い物ではなく、ましてや一つの命を預かるわけですから、熟考の後、犬をお迎えください。

その結果、ボーダー・コリーを迎えると決めた場合、おおむね以下の初期費用がかかります(商品に関しては一般的なものから少々リッチなものまで含みます)。

ボーダー・コリーを迎える場合の費用の目安

項目 費用の目安
ボーダー・コリーの子犬の価格 15万円~
狂犬病予防注射 3,000円~5,000円程度
注射済票 500円程度
犬の登録料 3,000円
混合ワクチン(5種~10種) 5,000円~1万円程度(※7)
犬用ベッド 5,000円~3万円程度
サークル・ケージ 1万円~3万円程度
食器・水飲み・フード(ドライフード1袋)類 5,000円~1万円程度
トイレ・トイレシート類 7,000円~1万,3000円程度
ブラシ・コーム・爪切り類 3,000円~8,000円程度
首輪・リード類 2,000円~6,000円程度
おもちゃ類 1,000円~3,000円程度
合計 約4万5,000円~12万円程度+子犬の価格

※価格はあくまでも目安であり、販売者や子犬の状況、動物病院、商品などの条件によって変動します。
※狂犬病予防法により、犬を迎えてから、もしくは生後91日以上たってから30日以内に狂犬病予防注射を受けることが義務付けられています。ただし、病気や高齢など事情があって接種できない場合は、届け出をすることで免除が可能となります。接種場所は自治体による集合注射と動物病院とがあり、費用に若干の違いがあります。
※2022年6月より環境省管轄の下に新たに始まった「犬と猫のマイクロチップ情報登録」。
狂犬病予防法の「特例(ワンストップサービス)」に参加している市区町村の場合は、この新登録制度にマイクロチップ情報を登録すると、同時に市区町村にも情報が通知され、これをもって狂犬病予防法における登録も済み、マイクロチップが鑑札と見なされます(ただし、別途登録料は必要)。
⇒環境省「動物の愛護及び管理に関する法律に基づく 犬と猫のマイクロチップ情報登録」