そして、後悔しながらも失敗から立ち直り再生しようとしているお兄ちゃんの姿を見て、舞ちゃんは自分のことをどう思ったのだろう。貴司くん(赤楚衛二)への恋心がダダ漏れなのに、関係について問われると毎回「ただの友だちですー」と言ってる姿に、なんだそれ、貴司くんからの告白待ちか?と正直モヤモヤしてたんですよ。ところが久留美ちゃん(山下美月)の超ストレートな質問(あれを聞けるのは彼女しかいない)で、とうとう本心が聞けて、すべて納得。「友だちです」は周りにではなく、自分に言い聞かせてたんですね、貴司くんがなんでも話せる幼なじみでいなくちゃ、恋愛関係になったらもう友だちには戻れないから、と。いわば柏木(目黒蓮)との恋の失敗と後悔による、柏木後遺症。彼女の、こうと決めたらしつこくやり続ける頑固さと、恋心を隠しきれない不器用さが、悪い化学反応で凝固してこれまでの変な態度になっていたんですね、なんてこった。

 しかし2人のぬるいお風呂のような心地よさげな関係も、自称ファン1号の秋月史子(八木莉可子)が現れたことで冷えようとしている。デラシネに押しかけて「私の短歌読んでいただけませんか」とか、「奥様ですか」と聞いて否定されて「よかった」とか、朝ドラだからやわらかな三角関係として話が進んでますが、これじゃほぼサスペンス、夜のドラマなら秋月はストーカー化してますよ、笑顔を向けてる場合じゃないですよ貴司くん。外から見てると貴司逃げろって思うけど、編集者リュー北條(川島潤哉)のダメ出しでゴリゴリと精神を削られてると、何もかも肯定してくれる短歌仲間的な女性にすがってしまいそう。貴司も舞ちゃんのことを好きに違いないけど、あんなに「彼女じゃないです、友だちです」と繰り返し否定されたら、彼女に迷惑かもしれないと優しさからあきらめてしまうかも。新たな失敗と後悔を生み出す前に、ちゃんと本当の気持ちに向き合ってくれ舞ちゃん。柏木との別れに使われてから「柏木公園」となぜか勝手に脳内ネーミングしてしまったあの公園の負の呪いを解いて告白して、『舞いあがれ!』がサスペンスドラマになる流れも断ち切ってほしい。

■番組情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス

出演:福原遥、高橋克典、永作博美、横山裕、高畑淳子、赤楚衛二、山下美月、山口智充、くわばたりえほか
作:桑原亮⼦、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number「アイラブユー」
語り:さだまさし
制作統括:熊野律時、管原浩
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐
プロデューサー:上杉忠嗣、三鬼一希、結城崇史
広報プロデューサー:堀之内礼二郎、齋藤明日香
制作:NHK
公式サイト:nhk.or.jp/maiagare