新型コロナウイルスの感染拡大により、大きなストレスを感じるケースが多く報道されています。感染症の大規模な流行は国際的にも災害の一つと考えられており、国内でも生命保険各社が「災害扱い」とするなど、自然災害と同じように心や体に悪影響を及ぼすと考えられるでしょう。そこで、過去に被災した地域を参考に、心身の健康回復のプロセスについて考えてみませんか。
ストレスにさらされると、心や体はどうなるの?
災害によるストレスは、人の心にネガティブな感情をもたらすことがあります。具体的には、不安や恐怖、興奮や強い怒りなどです。今回のような感染対策のための外出自粛など、行動の自由が制限される状況が長引くことでも、心の不調が起こることは十分ありえるでしょう。
また、普段とは違った生活リズムで暮らしていると体内時計が乱れ、結果的に不眠や食欲不振など身体症状にもつながります。
こうした心身に現れる不調は決して特別なものではなく、誰にでも起こりうる現象とされ、そして安心して過ごせる生活を送れるようになれば、多くの人は自然に回復すると言われています。
自然災害の多い日本では、地震や津波などで心身にダメージを負った人を支援する取り組みも各地で行われていて、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震などの多くの研究データが蓄積されています。
これらを参考に、今回の感染症流行におけるストレス緩和について考えてみましょう。
災害時の心の変化とは
私たちは、大きな災害に直面すると「茫然自失期、ハネムーン期、幻滅期、再建期」といった心の変化を経験すると言われます。具体的にこれらがどんな状態なのか見ていきましょう。
災害直後はショックや混乱が見られる
災害の直後は、人々の間にショックや混乱が生じます。この状態は「茫然自失期」と呼ばれ、文字通りほとんどの人が茫然自失となる時期です。中には危険をかえりみず無茶な行動を起こす人も出てきます。
新型コロナウイルスの感染者数が爆発的に増えた直後は「どうしたら良いか分からない」と感じた人が多いのではないでしょうか。そして中には、感染リスクがあるにもかかわらず、デマによる異常な買い占めをする人や、パチンコ店に並ぶ人が現れたことも話題になりました。
少し落ち着くと助け合いムードに
災害によるショックが少し落ち着いてくると、人々の間で連帯感が生まれ、助け合いムードになるとされています。「ハネムーン期」と呼ばれ、同じような境遇の人たちが互いに助け合うことで窮地を乗り切る時期のことです。
全国の地方自治体でも、今回のコロナ禍で影響を受けた飲食店同士で助け合おうと、ドライブスルー方式の「テイクアウトマルシェ」が発足しています。海外でも同様に助け合いの輪が生まれ、ベトナムでは無料スーパーの実施や就職支援などが行われています。
疲れがたまると、体調不良や怒りの感情に悩まされる人も
普段の生活と違った日常で、次第に疲れが目立つ時期がやってきます。過去の被災地でも「幻滅期」と呼ばれる時期になると、やり場のない不安から、支援の遅れや行政への不満、怒りをあらわにする人が見られました。疲労がピークに達し、体調を崩す人も出てきます。
必要な支援が遅れることは現実としてありますが、普段では考えられない怒りの感情は疲れがたまったサインかもしれません。また、過剰なストレスや過重労働は体調不良の原因になります。意識的に休息の時間を設けましょう。
日常が戻ると回復するけれど個人差がある
いつもの日常を取り戻すと、次第に人々が回復する「再建期」が訪れます。これまでの被災地では災害発生から回復まで何年もかかることがほとんどでした。そして回復にかかる時間には個人差があり、すべての人が同じように立ち直れるわけではありません。大きなショックを受ければ、回復にも長い時間が必要です。
まずは自分自身をねぎらうこと、周りの人とお互いの努力を認め合うことが前向きな力を生み出す助けになります。