◆信頼に厚いぷっくらとした唇
初登場場面からして杉野君は視聴者に強く印象付けている。家康が身体を休める大樹寺の庭に木があり、康政はその上で寝そべる。これもまた勝手気ままな才能ならでは。顔に論語を被せてうたた寝でもしているのだろうか。この寺での修行の身でありながら、なんとまあ自由なスタイルである。
彼の面倒を見る住職の登譽上人(里見浩太朗)からもやる気があるんだかないんだかよくわからない調子を叱られることもある。そこへやってきた未来の将軍、家康にまさか感化されることになるとは想像しなかったろう。同じ一門でありながら家康の首を付け狙う松平昌久(角田晃広)を蹴散らす家康の勇姿を、まじまじと見つめる康政のその瞳。そしてその唇。
勝手気ままでやる気がないようだが、彼は決して人生に対して軽薄で厭世的な考えを持っているわけではない。榊原康政といえば、文武に秀で、その後「徳川四天王」として家康に仕えることになる大人物。容姿端麗さを兼ね備えた智将の若き日を杉野遥亮の信頼に厚いぷっくらとした唇が物語る。