出版翻訳家デビューサポート企画レポートをお届けします。前回に続き、学術書を選んだSさんが登場します。

Sさんの試訳で気になったのは、やはり表記の問題でした。この点については第199回「どうして表記が大事なの?」で詳しく解説していますので、そちらの記事もぜひご参照くださいね。

Sさんの場合は、「つながり」「つなぐ」という言葉が登場するのですが、ひらがな表記の部分と「繋がり」「繋ぐ」と漢字表記の部分が混在していました。タイトル案にも使われている言葉のため、何か意図があって使い分けているのでなければ、不統一だととても目を引いてしまいます。どちらに揃えるかは好みの問題もありますが、読みやすさを考慮してひらがな表記のほうがよさそうです。こういう時には書籍のタイトルを検索してヒット数が多いほうや読者層に近いほうに合わせることも考えられます。この場合でも、ひらがな表記を選ぶことになるでしょう。

表記に関連して、Sさんの試訳では、“○○○○”や‘○○○○’とクォーテーションマークが多用されていました。これも頻出すると字面がうるさくなってしまいますので、鉤括弧に置き換えて「○○○○」と表記するようにします。ダブルクォーテーションとシングルクォーテーションに特に意味のある使い分けはないようでしたので、こういう場合はいずれも鉤括弧に置き換えて構いません。