前作から29年ぶりの新作劇場版となった本作はアニメだった前作と違い、今回はアニメと実写を組み合わせた作品だ。

 今や3Dアニメの技術は進化を続けており、実写と見紛う映像を作り出すことも可能だ。この時代に『トムとジェリー』はなんと3Dではなく2Dを採用している。役者と一緒に平面の2Dキャラが右往左往している! しかも動きはリアルな生き物らしいタッチではなく、カートゥーン風の誇張された「マンガ的な」動きだ。

 この画面、はっきりいって違和感バリバリである。が、それがマイナスにはなっていない。プラスにしかなっていないのだ。監督のティム・ストーリーはマーベル・コミックの映画化『ファンタスティック・フォー』2部作を手掛けた人物で、マーベル映画がまだ、シネマティック・ユニバースなるビッグプロジェクト化する以前の作品。手足がゴムのように伸びる男や全身が燃える炎の男や全身岩石男とか、マンガとしか思えないようなキャラクターを使って能天気な作品に仕上がっていた。そう、彼は「マンガ的な世界」の表現に長けていたのだ。

『ファンタスティック・フォー』は監督を変え2015年にリブートされたが、マンガ的な表現を全部捨ててリアルに、シリアスに徹してまったく面白くなくなっていたので失敗した。