なぜ、しまむらは「デフレ終焉」でも強気なのか?

そうした中で、しまむらの株価が急騰したのはなぜか。きっかけは前期決算と同時に発表した今2019年2月期の「新予想」だった。それによると売上は4.0%増の5875億円、営業利益は18.9%増の510億円と2期ぶりに過去最高益を更新する見通しである。さらに同社は前期の配当を10円増配の240円に、今期も240円の配当を継続することも発表してきた。

ちなみに、今期の営業利益予想はアナリストのコンセンサス(446億円)を大きく上回るものだ。しまむらが示した強気の「新予想」は株式市場にサプライズをもたらし、翌3日には1.6%高に上昇、さらに4日には4.9%高の1万4250円と急騰したのである。

それにしても、なぜ、しまむらは「デフレ終焉」でもこれほどまでに強気なのだろうか?

ユニクロとの「覇権争い」が始まる?

しまむらの強気予想の背景にあるのは、積極的な出店計画だ。たとえば「しまむら」業態は、前期40店舗出店し期末で1401店舗に達した。第2ブランドの若者向け「アベイル」は、前期12店を出店し313店舗となった。第3ブランドの子供・ベビー服の「バーズデイ」は前期23店舗を出店し261店舗となっている。

しまむらは、もともと「1万2000世帯程度の小商圏」を前提としたコンビニのようなドミナント戦略で出店数を伸ばしてきた。ただ、ここ数年は大都市圏への進出、ショッピングセンターへの出店などを成長戦略の要としている。若者向け「アベイル」などしまむら以外の業態については、商圏エリアを2万世帯と大きく設定している。しまむらの目標は2020年度に全業態で国内3000店舗だ。今年の新規出店は、しまむら業態は都市部を中心に40店、アベイルは25店、バースデイ25店など100店舗程度となる予定だ。

ちなみに、ファーストリテイリングはユニクロより安いレンジの第2ブランド「GU」でしまむらの市場に乗り込んできた。これに対して、しまむらは「アベイル」で真っ向から勝負する構えだ。しまむらも「出店比率」でいうとアベイルやバースデイの比率が高くなっている。今まではチラシ中心の販促でECにも力を入れておらず、広告にも地味なイメージがあったしまむらであるが、前期からTV広告やWebでの販促にも取り組んでいる。そして、今期は楽天やZOZOTOWNなどへの出店でECにも本腰を入れる見通しである。

「田舎のヤンキー臭」が消えてしまうのか?

さらに、しまむらは今後の採算改善に向けてPB(プライベートブランド)も拡充するという。今年は自社ブランド「クロッシー」の美シルエット「スタイルアップパンツ」という洗練されたPBジーンズを投入した。

今年2月、しまむらでは13年ぶりに社長が交代した。北島常好新社長の体制のもとで「デフレの勝者」から「小売の勝者」に羽ばたこうとしているのだろう。そのためにも、ユニクロとの「覇権争い」に負けるわけにはいかない。先週の株価急騰は、そんなしまむらへのたくさんの投資家のエールであり、文字通りユニクロとの全面戦争に向けた号砲のように筆者には感じられるのだ。

ただ、筆者としては、しまむらの魅力である「田舎のヤンキー臭」が消えてしまうのではないか、との懸念もある。スタイリッシュにイメージチェンジしたしまむらなど、とても想像できない。だが、これも時代の流れ、しまむらの「ユニクロ化」は避けて通れないのだろうか?

(ZUU online編集部)

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