◆清居奏というファンタジー、八木勇征というネバーランド

©「美しい彼」製作委員会 S2・MBS
 八木勇征は尊い。尊いからにはこれは重要文化財と一緒で強く守られなければならない。重要文化財としての彼の尊さを象徴するキャラクターである清居奏は、特にフィクション要素が強烈で限りなくファンタジーに近い。クラス替えの教室に清居が入ってくる瞬間がスローモーションになって桜の花びらが彼の頭上を舞っていたのはそのためだ。

 このファンタジー世界を創造するため、八木が命を吹き込んではじめて清居奏は生まれ、立ち上がり、踊る。清居ファンタジーの主人公である平良の目にはだから清居しか映らない。彼は、宗教のように清居を信奉する。同じように私たち視聴者の目には八木勇征しか映らない。平良は、清居ファンタジーの住人としての厚い信仰心によってこの世界を守る。そして重要文化財としての八木勇征を視聴者の熱い眼差しが支える。

 清居奏というファンタジーが、八木勇征というネバーランドに包まれているような壮麗な作品、それが『美しい彼』なのだ。待望の『美しい彼 シーズン2』がはじまったら、さらに多く視聴者の眼差しがこの“夢の国”(ネバーランド)を支え、守り、尊ぶことになるだろう。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu