どうしてこんなことができるのか? それはAがいる場所にあったというのだ。

 フィリピンのルソン島、入国管理局が管轄する「ビクタン収容所」にいるというのである。

「不法滞在者や刑事事件を起こした外国人が収容されている場所。職員に金を払えば、スマホも持てるし、冷房の効いた個室も与えられる。当然、そこから日本に叩きの指示もできるわけです。フィリピンではまだプリペイド式SIMカードのスマホが使える。だから足もつかない」

 とXは語ったそうだ。

 頭いい! 不謹慎だが、これを読みながら感心した。

 Aは、特殊詐欺、オレオレ詐欺をやっていたそうで、その頃の「データ」があったそうだ。

 入りやすくて、しかも自宅にお金を持っている人間たちのリスト。それをもとに目星をつけ、指示していたというのである。

 SNSで寄ってきたやつらには、運転免許証などの身分証明書と、自撮りの画像などの個人情報を送信させる。

 そいつらが裏切るようなら、警察にチクるぞと脅す。1回こっきりでやめてもいい。

 Aのテカがカネを集め、送金するのだろう。

 Aはルフィと名乗っているという。彼のほかにも何人かいるらしいが、日本の警察庁の求めに応じて、フィリピン当局はAらの身柄を日本へ渡すことを決断するようだ。

 Aの誤算は、フィリピン当局を見くびったことであろう。

「各地で相次いでいる強盗事件に絡み、フィリピンのレムリア司法相が30日、首都マニラの司法省で会見した。入国管理局の施設に収容されている日本人から携帯電話が没収されたと述べた。今後、使用履歴などを調べる意向を示した。

 この強盗事件では、この施設に収容されている男らが複数の事件で『ルフィ』を名乗って指示を出していた疑いが浮上している。レムリア氏は『日本の捜査当局が身元を確認する見通しだ。我々は日本政府に全面的に協力するつもりだ』と述べた」(朝日新聞DIGITAL1月30日 15時56分)

 こうしたITを駆使した犯罪はこれからますます増えていくだろう。それに追いつかないのは警察もメディアも同じである。

 つくづく頭のいい奴がいるものだ。(文中一部敬称略)