◆黒沢の甘い囁き
それで気になってくるのが、町田啓太はどんなシチュエーションで、どんな言葉で玄理にプロポーズしたのかということである(精悍な彼女である。もちろん逆からのプロポーズの可能性もある)。ここからは現実とドラマ世界とを一緒くたにする筆者の妄想をどうかお許し願いたい。町田くんの結婚場面が描かれた出演作品を思い浮かべると、やっぱりあの作品しかない。
『チェリまほ』で赤楚衛二演じるもっさりな安達清に、心身ともに完璧さを極めた黒沢優一が思い高まり、「お前のこと好きなんだ」と告白してしまったのが第6~7話にかけてのこと。以降安達は、仕事が手につかず気持ちを整理しようにもできない。黒目がちな黒沢の瞳がまっすぐ安達を見つめる。かと思えば、安達をからかう黒沢は、上唇に若干力を入れていたずらっ子な表情をする。そして去り際にはこう耳元で囁(ささや)いた。
「これ以上一緒にいたら歯止めがきかなそうだから」
たまりませんね。この場面は何度見返しても(と同時に聞いても)よからぬ妄想を掻き立てる。こんな囁き、黒沢よ、これ以上はやめてくれ。あなたの甘い囁きが今となってはすべてプロポーズの言葉にしか聞こえないんだから。