一般社会でロースクール(法科大学院)の存在を詳しく知る人は少ないだろう。司法試験は弁護士、裁判官、検察官といった「法曹三者」になるための第一関門で、合格率は50%に達しない。そして司法試験には受験資格が必要で、そのためには法科大学院のカリキュラムを修了するか、合格率がきわめて低い予備試験(司法試験予備試験)に合格しなくてはならないのだ。過去のドラマには、『HERO』『イチケイのカラス』(ともにフジテレビ系)など、その難関を突破した法律家の活躍を描いた作品はあった。昨年の『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系)ではパラリーガルの石子(有村架純)が司法試験に挑む描写はあったが、ロースクールは描かれなった。しかし、この『女神の教室』が映し出すのは、司法試験に向けて焦り、もがき、無力感に苛まれている生徒たちだ。その姿にかつての自分の姿を照らし合わせて、胸が苦しくなった視聴者もいたはずだ。

 序盤に漂う重く鬱々とした雰囲気の中で、唯一あかるい空気を放っていたのは柊木だった。実務的な知識や想像力も養うべきとする柊木に対し、司法試験と無関係の指導を嫌う生徒たちは厳しい態度を見せ、柊木はクレームまで受ける。同僚となる研究科教員の藍井仁(山田裕貴)からは、「予備試験を突破できる実力がなかった彼ら(生徒)は仕方なくローに通い司法試験の受験資格を得ようとしてます。つまり彼らのゴールは司法試験合格、それのみです」と断言されてしまう。しかし、生徒たちの反発や、合格請負人として生徒たちから崇拝される藍井の徹底的に合理的で無駄のない授業スタイルを目にしても、柊木はどこ吹く風。学院長の守宮清正(及川光博)から「柊木先生は、柊木先生のやり方で」と助言を受け、ロースクール時代に柊木と同期だった友人の検察官・横溝太一(宮野真守)との会話をヒントに、柊木はニコニコと笑顔を浮かべながら信念を貫くのだった。

 真逆な考えをしているだけに、生徒たちが柊木の流儀に振り向くのはもう少し先だと思われたため、はやくも“味方”ができたのには驚きだったが、教師が主人公となる学園ドラマの王道的展開でもあった。守宮から実務演習を柊木と藍井の2人で担当するよう指示され、初回は模擬裁判をすることに。弁護側の柊木チームになった生徒たちは、寄り道・休憩お構いなしの柊木の指導に戸惑いつつも、徐々に資料には載っていない被告人の実像に思いを馳せるようになる。特に、ロースクールではお荷物扱いの桐矢純平(前田旺志郎)は雫とウマが合い、実務演習では検察側となる藍井チームの優等生と渡り合うまでに覚醒。その後の授業では、事例の人物を“さん付け”するようになり、柊木流指導法により、人を想う法律家に向けた一歩を踏み出したようだ。