それほど廣瀬さんが、愛して止まないねこぺんちゃんの脾臓に癌が見つかったのは、ねこぺんちゃんが11歳になった時の定期健診でした。すぐ手術し、小康状態を保っていましたが、高齢期になった15歳の時、再び異変が表れました。
「血便が出たので、びっくりして検査に向かいました」
便秘が原因との結果に、ほっと胸をなでおろすもつかの間、やはり違和感をぬぐえたなかった廣瀬さんが病院で再検査をお願いすると、ねこぺんちゃんの大腸に腫瘍があることがわかりました。
15歳という年齢を考え、手術すべきかどうか、廣瀬さんは悩みましたが、幸い、ねこぺんちゃんの健康状態が良かったため手術を決意。
ところがいざ手術をしてみると癌はすでに全身に転移していたのです。
「結局インオペ(手の施しようがない)いう結果でした。その時、余命10日くらいと言われたんです・・・。何としてでも助けたかったのに、逆の結果となってショックのあまりその後どうやって家に帰ったのかも覚えていません・・・」
食欲がどんどん落ちていくねこぺんちゃんに、廣瀬さんはシリンジを使って食事を与え続けました。
「一秒でも長く一緒にいたくて、ステロイドの点滴も家ですることにしました・・・もともと病院が大嫌いな子で、診察台に乗ると大声で叫ぶので時間外の予約を取らなければならないほど。病院での点滴は苦痛だろうと、僕が毎日点滴をすることにしたんですが、やっぱり嫌がって逃げてしまう・・・ついにはぼくの顔を見ると逃げるようになって、これが一番つらかったですね」
▲手術後のねこぺんちゃん
大好きな子に長生きしてほしいがために、あらゆる手立てを考えているのに、嫌われてしまう。「君のためにやっているんだ」とどんなに伝えたくても、ねこぺんちゃんにその思いはなかなか届きません。
そんなねこぺんちゃんを見ているうちに「何が正しいのか」わからなくなり、廣瀬さんは自分を責める日が続いたと言います。
「大好きな子が一番嫌がることをやっている自分ってなんなんだろう・・・。それでも・・・嫌われてもいいから生きていてほしかった・・・」
やがて、その日は確実に訪れました。
体調を崩したねこぺんちゃんに付き添い、異変にすぐ対応できるよう、リビングのソファーで寝起きをしてきた廣瀬さん。
その朝、廣瀬さんが「おはよう」というと、声も出せず、やせ細ったねこぺんちゃんが、その日は「にゃー」と小さく答えたと言います。
「いよいよなんだと思い、それからずっとねこぺんの前脚を握って、付き添っていました・・・・。まもなくクリスマスだったので、今年も絶対にクリスマスを一緒に迎えようね・・・何度も、何度もそういってねこぺんに話しかけていたんです」
しかし願いは届かず、クリスマスを目前に、ねこぺんちゃんは静かに天国に旅立って行きました。
その後、荼毘に伏され、遺骨となってねこぺんちゃんが戻ってきた深夜、廣瀬さんが眠れずにいると、突然、自宅の仕事机からクリスマスソングが流れてきました。
メロディーの発信元は、机に飾ってあった友人からのクリスマスカード。
「カードは、ポチっとボタンを押すとクリスマスソングが流れるタイプのものだったんですが、そもそも誰もボタンを押してもいない。デスクにも近づいていない。本当に不思議な出来事でした。きっとねこぺんが『ボクはここにいるよ』と、最後のお別れに来てくれたのだと思います」。
廣瀬さんは事務所での電話相談業務で、ペットロスに関する悩みを受けることもあると言います。
「どんな結果でも、飼い主さんが決めたことが一番。相談者にそう応えながら、同じ言葉を自分にも言い聞かせています・・・。あれが正解だったのかどうか、今でも思い出すと胸が苦しくなります。でも、ねこぺんは帰ってきません。今、ぼくがするべきことは、ねこぺんのように、行き場がなく、捨てられる命を減らす事。それがねこぺんとの約束なんです」
不幸な命を一頭でも減らす―。
15歳で旅立ったねこぺんちゃんのメッセージを胸に、廣瀬さんは、今日も動物愛護の仕事に励んでいます。
(取材:2022年2月)
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