テレワークが急速に浸透した一方で、「書類にハンコを押すために今日は出社しないといけない」と嘆く声もあります。コロナ禍を受けて、“働き方”のスタイルが根本から変化しようとする中、テレワーク最大の障壁とも言えるハンコ問題はどう解決されるのでしょうか?ビジネスシーンにおける、ハンコを取り巻くさまざまな動きを探ります。
書類の電子化を求める切実な声
まずは、企業文書を電子化・ペーパーレス化するクラウドサービス「paperlogic®」を展開する、ペーパーロジック株式会社が2020年5月に実施した「緊急事態宣言下における会社員の出社状況」に関するアンケート調査の結果を見てみましょう。
全国の会社員の男女105名を対象に「緊急事態宣言が行われた以降でも、契約書や稟議書等への押印のために出社しましたか?」と質問したところ、なんと「3回以上出社した」と回答した人が30.5%、「1、2回出社した」と回答した人が14.3%という結果でした。
緊急事態宣言下においても、多くの人が押印のために出社せざるをえない状況に陥っていたことがわかります。
またペーパーロジックは、同じく2020年5月、全国の県庁職員・市役所職員・区役所職員111名を対象に「新型コロナウイルス環境下の業務量変化」に関するアンケート調査も実施しています。
こちらの調査でも、新型コロナウイルス関連の業務が増加し、緊急事態宣言後も書類対応のために多くの職員が出勤していたことがわかりました。
「書類対応が電子化されて欲しいと思いますか?」という質問に対して、紙の書類を扱う人々が「全て電子化してほしい」35.6%、「一部のみ電子化してほしい」52.5%と回答しているのに、なんとも切実なものを感じます……。
GMOインターネットグループはハンコレスを宣言
海外のビジネスシーンではハンコではなくサインが主流で、電子サインも当たり前のものになっています。日本でも電子サインは法的に認められているのですが、やはりハンコが圧倒的に主流な中で、自社だけが電子サインに移行するのは勇気がいるものなのでしょう。
しかし、コロナ禍の中で、GMOインターネットグループはハンコレスをいち早く宣言しました。
同グループは5月25日、withコロナ時代における経営スタイル「新しいビジネス様式 by GMO」に移行することを発表し、その一環として「サービスにおけるお客様の各種お手続きから、印鑑を完全撤廃(ハンコレス)」「お取引先とのご契約は電子契約のみとする(ペーパーレス)」と宣言しました。この宣言により、GMOは「先進的な企業」としてのイメージを高めたことでしょう。
ブロックチェーンを使った「電子実印」も
ハンコレスのためのサービスも次々とローンチされています。
株式会社ケンタウロスワークスは、電子署名システム「電子実印」の無料提供を4月29日よりスタートしました。
こちらは、スマートフォンとブロックチェーン技術を組み合わせることで、ハンコなしでも「誰が、いつ、何の書類に署名したのか」を手軽に証明できるシステムだそう。仮想通貨バブルの中で一気に話題になったブロックチェーンですが、ハンコレスの文脈でも注目を集めているようです。
また、ワンストップ電子契約サービス「NINJA SIGN」を運営する株式会社サイトビジットは5月20日より、同サービスのProプラン加入者を対象に契約締結1通ごとに100円値引きするキャンペーンをスタートしました。
「電子契約をひとりでも多くの方が体験し、ハンコ文化を変えるために」という思いが込められているそうで、同社が掲げる「脱・印鑑宣言」の本気度が感じられます。
たしかに「紙とハンコに慣れきっているから」「電子契約がどんなものかわからないから」という理由で、ハンコレスに踏み出せない企業がほとんどのはず。まず「電子契約は不安がるようなものじゃない」との周知を狙う企業は多そうです。
となると、電子印鑑や電子契約に関連してお得なキャンペーンがいろいろ行われそう!この絶好のチャンスを逃さず、早めにハンコレス、ペーパーレスにも慣れていきたいところです。とくに若手ビジネスパーソンにとって、「新しいものを知っている」ということは先輩たちをリードできる貴重なポイントかもしれません。