では、具体的にどこが面白いのか? 細かく考えてみたいと思います。

 まず言えるのは、『はじめてのおつかい』はここでしか見ることが出来ない唯一無二のドキュメンタリーであることだと思います。テレビの世界には数多のドキュメンタリー番組がありますが、密着されるのは基本的に大人。そのため、プライベートに密着していたとしても、それはあくまで「カメラの存在を意識したうえでの素」なわけで、100%の素を撮影することは出来ません。それがこの番組の密着対象は、カメラの存在に気づかない幼い子ども。100%素の子どもを撮影しているわけです。このリアリティーや生々しさは大人が密着対象のドキュメンタリー映像では出せないものです。

 そして、ドキュメンタリーでありながらも、このおつかいはテレビだからこそ出来るものであるという側面もあります。普通、幼い子どもにおつかいに行かせるのはリスクが伴います。交通事故、迷子などのリスクです。事実、このご時世に小学校入学以前の子どもに、1人でおつかいに行かせる家庭はあまりないでしょう。『はじめてのおつかい』は尾行するカメラマンやスタッフが子どもの安全を確保するからこそ出来るわけです。

 ここでのおつかいは、出演する子どもだけでなくその親にとっても貴重な体験ですし、それが映像として残るのは人生の宝物のはず。『はじめてのおつかい』に我が子を出したいと思う方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。この「出演者が得をする」「出たいと思う人がたくさんいる」というのも素晴らしい企画の要素の1つだと思います。安全面や見え方で出演者が損をしてしまう番組だと、出演者の確保が難しくなってしまいます。特に一般の方がメインとなる番組だとなおさらです。