3.人に現れるグリーフの心理過程

【基本パターン】
喪失した対象やタイミングなどの要素によって個々に違いはありますが、基本的な心理過程には「衝撃期」「悲痛期」「回復期」「再生期」があります。
ペットが生きている間に起こるグリーフの際は「衝撃期から回復期」、死別の際は「衝撃期から再生期」へと進みます。
この過程においては感情や行動が一定ではなく、大きくなったり、和らいだりします。
また一方向に段階的に進むのではなく、ステージの行ったり来たりを繰り返しながら、自分の歩調で流れていくと理解してください。

1 衝撃期

自分自身を守るための自己防衛の時

喪失を頭では理解できていても心が受け入れることができない状態。心に受けたダメージをこれ以上大きくしないために、感覚を麻痺させ思考が低下する反応が起こります。強いショックを受けている状態のため、頭が真っ白になる、何がなんだか分からずパニックになる、信じられず現実を否定、拒絶するなど現実逃避が起こります。

2 悲痛期

真に心が悲鳴をあげる時

喪失が起きた現実を心が受け入れようと頑張っている状態。どうしてこの喪失が起こったのか振り返って後悔し、自分を責めたり他者への怒りが強く表れることも多く、マイナス思考となり「グリーフ=悲嘆」で溢れます。そして、この喪失が続いたらどうなってしまうのか、さらに何かを喪失したらどうしようと想像をすることで抱える「予期グリーフ」も現れます。悲しくて仕方ない、涙が止まらない、不安や恐怖が強まる、孤独感、迷い、悩み、どうしたらよいのか出口が見えない、といった感情が現れます。

3 回復期

ようやく喪失の現実を受け入れる時

喪失したことを認め、これからできることを考える力を取り戻してきた状態です。マイナス思考だった悲痛期から前向きに考えることができるようになり「喪失はしても今できることが必ずある」という気持ちになります。
気持ちが楽になる、笑顔を取り戻す、目的が見えてくる、勇気が出てくる、グリーフは幸せだった証だ、といった肯定的な考え方ができるようになります。

4 再生期

さらに大きく一歩前に踏み出す時

ペットとの死別体験で生まれるグリーフでは回復期の後に再生期が待っています。最愛のペットが亡くなって、姿は見えなくとも自分と共に生きている。消えることはなく今まで通りそばにいるのだという安心感が大きくなります。
出会えて良かった、本当に幸せだった、またペットと出会えたらいいな、これからも一緒だよ、と感じられ喪失感より幸福感が大きくなります。

グリーフの心理過程は喪失が起きた時、現実を拒絶する気持ちから、現実を受容して乗り越えていくまでの心の変化を表しています。自分の心の自然治癒力を応援することが自身のグリーフケアとなります。グリーフを抱えた時には、まずこれは自然な心の反応だと理解しましょう。

不安や心配、疑問があるとインターネットで検索をしたり、情報を得ようとしたくなりますよね。でも、その情報によって新たにグリーフが加算され、不安や恐怖に変わっていくことも少なくありません。
身近に感じるグリーフをありのまま話せて気持ちが楽になる人を見つけておくと安心ですね。グリーフを一人で抱えないことが大事です。

ペットと暮らす当たり前の日常は「宝物」
(画像=『犬・猫のポータルサイトPEPPY(ペピイ)』より引用)

▲阿部美奈子先生による医療従事者向けセミナーの様子


提供・犬・猫のポータルサイトPEPPY(ペピイ)

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