被害に遭った女性たちも同じだった。いま告発しなければ、自分を苦しめた映画界の悪習は、子どもたちの代まで残ることになるはずだ。子どもたちには遺恨を残したくない。そんな母親としての想いが、彼女たちに闘う勇気を与える。
物語のクライマックス、ハーヴェイが弁護士らを伴って「ニューヨーク・タイムズ」へと乗り込んでくる。編集部サイドが記事を公表する前に、ハーヴェイ側に反論する機会を用意したのだ。女性記者とハーヴェイは直接対峙することになる。
編集部に現れたハーヴェイを観た人は、「なんで、こんなひとりのオッサンにみんな怯えていたんだ?」と不思議に思うのではないだろうか。映画界では絶対的権力者だったハーヴェイだが、映画界から一歩外へ出れば、滑稽な「裸の王様」に過ぎなかった。
裸の王様はハリウッドだけでなく、日本の映画界や芸能界にもいるし、ショービジネス以外の分野にも存在するはずだ。おかしな習慣や明らかに間違った指示には「 NO」とはっきり伝えない限り、裸の王様は今後もぞろぞろと現れてくるだろう。
『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』
原作/ジョディ・カンター、ミーガン・トゥーイー 製作総指揮/ブラッド・ピット 監督/マリア・シュラーダー
出演/キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン、パトリシア・クラークソン、アンドレ・ブラウアー、ジェニファー・イーリー、サマンサ・モートン、アシュレイ・ジャッド
配給/東宝東和 1月13日(金)より全国公開
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