「情報の非対称性」を「シグナリング」でカバーする

それでは、マッチングアプリは、合コンのメリットである「深さ」に弱点があるのだろうか。必ずしもそうとは言えないかもしれない。キーワードは「シグナリング」だ。

シグナリングとは、2001年にノーベル経済学賞を受賞したマイケル・スペンス氏によって分析されたミクロ経済学の概念だ。取引において、買い手と売り手が同等の情報を保有している稀であり、ほとんどの場合は「情報の非対称性」が存在する。そこで、情報優位者は「この商品は~という性能を持っていますよ」とシグナルを発信し(シグナリング)、情報劣位者は複数の選択肢を提示したりテストを設けたりすることでふるいにかける(スクリーニング)。

恋愛市場に置きかえれば、自分がいかに魅力的な人間かをアピールするのがシグナリングであり、自分に言い寄ってくる人を見極めるのがスクリーニングだ。顔が実際に見えないネット上で出逢うということに不安を持つ人はまだまだ多い。そこで「情報の非対称性」をシグナリングでカバーするわけだ。

反対に、アタックされた側は、そのシグナルが本当かどうか見極める必要がある。職業を医者や弁護士と偽るのは造作もなく、デートのときだけ見栄を張ることによって、お金持ちを装うことは可能だからだ。

スクリーニングも重要な能力

マッチングアプリは大抵の場合、身長や顔写真、体型といった外的情報はもちろん、勤務先や年収、出身校、趣味嗜好などを詳細に記入することができる。自由に文章を記載できるフリースペースが設けられていることも多いので、その気になれば、かなり綿密なシグナルを発することができる。これは大きな差別化になるだろう。

恋愛市場に限らず、色々な場面でもシグナリングは活用されている。富裕層向けサービスの営業パーソンが、高級なスーツや時計を身に着けていることもそうかもしれない。多くの受験生が有名大学に入りたがるのも、学歴という分かりやすいシグナルを手に入れるためとも言える。新卒の就職活動も同様だ。

上手にシグナルを発して、受け取る側になるときはスマートにスクリーニングする。これが様々な分野で成功する秘訣なのかもしれない。

文・黒坂岳央(高級フルーツギフトショップ「水菓子肥後庵」代表)/ZUU online

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