会社をよりよくするための「休む」決断
前川:育休を取ってよかった!と思っていますが、まとまった期間会社を不在にすることへの不安や、違和感のようなものはありました。
中野:そうですね。私は特に営業職なので、自分の持っている目標数字に対する焦りもありました。
前川:休暇中の仕事は別の営業担当に引き継いでいたんですか?
中野:いえ、一定期間だけまるっと誰かに任せにくい仕事が多くて、調整に苦労しました。取引先の企業に育休に入ることを伝えた時に「おめでとうございます!」と祝ってもらえたのは、本当にありがたかったです。
前川:1週間、1ヵ月などの短期間限定であっても、職場を離れるのは不安だ、という男性も多いと聞きます。評価に響くのではないかとか、復帰した時に溜まったタスクを片づけることを考えたら休むのが怖い、とか。でも、育休に入るまでに社内で自分の役割が確立できていて、普段から同僚とのコミュニケーションが取れていれば、復帰後が不安で休めない、なんてことは起こらないのでは。
中野:もちろん、社風や職種、担当業務によって状況は変わるでしょう。でも、1ヶ月程度の育児休暇取得で同僚や上司との関係が悪化してしまうような職場は、あまり健全とはいえないですよね。
前川:ただでさえ多忙な部署なので、自分が休むことで他のメンバーに負担をかけてしまう申し訳なさは、私にもありました。でも、だからといって休めない、休まない、と判断してしまうのはよくない。この先、後輩たちにも同じ選択をさせてしまいかねないですからね。
中野:休暇取得をフォローしてくれた社内のメンバーに、改めて感謝ですね。
キャリアを中断せざるを得ない女性の気持ち
中野:自分が育休を取得したことで、産育休に入る女性の気持ちが少しわかった気がしています。
前川:それはありますね。女性の場合は年単位で職場から離れざるを得ないケースも多いですし。
中野:1年、2年経てば事業内容や経営方針、社内の雰囲気がガラッと変わってしまうことは珍しくありません。復帰した後の会社の空気に馴染めないとか、異動で慣れない仕事に従事しなければならなくなったといった女性の悩みを、これまではリアルに捉えられていませんでした。でも、自分が育休を経験した今では、産育休から復帰した女性社員のフォローを積極的にしなければと意識が変わりました。
前川:やはり女性は出産による体の負担が大きいじゃないですか。まだ復調していない状態で早々に職場復帰するのは、あまり現実的じゃない。だからといって、育児はすべて女性任せにするものでもない。男性も育休を活用し、夫婦揃って育児に向き合う期間を取ることは、とても重要だと思います。
中野:今のところ社内で次の予定はないですが、もしも男性社員に育休について相談されたら「絶対に取ったほうがいい!奥さんのフォローが最優先!」とアドバイスしますね。その分、仕事は全力でフォローします。
何もかも「会社任せ」では無責任すぎる
前川:2022年10月の法改正で、企業には「自社の労働者へ育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)制度と育児休業取得促進に関する方針の周知」が義務付けられました。だからといって、当事者が何も動かない、調べない、では、あまりに無責任すぎると思うんです。その気になれば情報をいくらでも取りにいけるのだから、国任せ、会社任せにしないで、制度について自分で調べ、会社に相談・提案する意識をもっていたいです。
中野:前川さんは育休制度や育児休業給付金、保険料の免除などについて、綿密に調べていましたよね。自分はバタバタしていて、あまり調べられなかったなあ。
前川:休みを取れば当然、収入は減ります。育休期間中の家計はどのように調整するのか。補填に活用できる制度はあるのかなど、事前に調べておくことで、休暇取得に対する不安が軽減できますよ。
育休体験を共有し、よりよい環境を整えたい
中野:そういえば、自分たちの育休体験談って、特に社内で共有していなかったですよね。
前川:取得した事実を周知しただけで、その後の話はできていないですね。これから本格的に社内制度を整えていくフェーズにあるのだから、我々が積極的に情報共有すべきなのかもしれません。
中野:状況に応じて柔軟に変化していけるのが、MAPのいいところですからね。
前川:中野さんもまだ「育児休業制度(※原則子が1歳(最長2歳)までの間に分割して2回の休暇を取得できる制度)」を活用できる期間が残っていますよね。今後また育休を取る予定はありますか?
中野:現時点では予定していませんが、タイミングが合えば取りたいですね。まとまった期間完全に休むのは難しくても、リモートワークと併用して家事育児ができる時間が取れたらいいなと。
前川:女性だけじゃなく、男性も仕事と家庭を両立する方法をもっと真剣に考えないといけないですね。「男性育休黎明期」をせっかく体験できたのだから、自分たちが積極的に社内制度の整備にも関わっていければと思います。
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