◆周囲の「あんな男、別れなよ」が受け入れられない理由

――彼氏くんの浮気のことは、お友達やご両親には相談しなかったのでしょうか?

浅野:言えなかったですね、昔のバイト先のクラブのママくらいにしか相談できませんでした。

――警察官やママさんに「別れなさい」と言われても、それができなかったのはなぜだと思いますか?

浅野:「別れなよ」と言われて「分かりました」って言える人はいないと思います(笑)。頭では「別れなきゃいけない」と分かっていたのですが心がついていきませんでした。

私も女友達に「もうあんな人とは別れなよ」と言ったことがありました。そういう時は対岸の火事というか、「別れてからその人がその先どうなるのか」あまり考えないで言っていたと思います。

あの時は、「別れなくちゃいけないと言うけど、別れた後私の人生が辛い時にあなたは何をしてくれるの? 無責任にそんな重大なことアドバイスしないでよ」と思って素直に受け入れられませんでした。怒りとは別の、少し虚しい気持ちを持っていました。

◆洗脳状態というか、その時は彼氏くんが全てになっていた

――どうすれば、彼氏くんともっと早く別れられたと思いますか?

浅野:私と彼氏くんの2人だけで完結した関係だったので、たぶん物理的に引き離されないと別れられなかったと思います。

時々ママさんに相談してはいたのですが、どんな言葉を聞いてもダメでした。自分でも「どうして別れなかったんだろう」と思うのですが、洗脳状態というか、その時は彼氏くんが全てになってしまっていました。振り返って考えても、どんな言葉をかけられたとしてもその時は離れられなかっただろうと思います。

――もしご両親が無理やり2人を引き離していたら結果は違ったのでしょうか?

浅野:警察に保護された時に、身元引き受け人の父にだけ連絡が行ったんです。だから家族の中で父だけは私と彼氏くんの事情を知っていました。でもあまり重く捉えていなかったようで、「母や妹に話して、実家の和を乱すようなことをするな」みたいなことを言われました。普段はそんなに悪い親というわけではなかったのですが、その時はそういう反応でしたね。だからもし親が彼と無理やり引き離そうとしたとしても、私は反抗して離れなかったと思います。

【浅野もね】

過去の実体験をもとにSNSでエッセイ漫画を発信。初の著書『ありがとう、昨日までの彼。私が婚約者に裏切られるまで』(KADOKAWA)が発売中。

Instagram:@monet_note_、Twitter:@mone_asano

<取材・文/都田ミツコ 漫画/浅野もね>

【都田ミツコ】

ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。