『エルピス』自体がパンドラの箱だったのか?

 最終回直前になっても解決の糸口はまったく見えない。大門がもみ消した自分の派閥議員のレイプ事件を告発しようとした、大門の娘婿で秘書の大門亨(迫田孝也)も突然、命を落とし、自殺として処理されてしまう。

 普通のドラマなら、最終話でスカッとする逆転劇があるのだろうが、ここまでの展開を見ていると、あまり気持ちの良い結末にはならないのではないかと思う。

 だが、それは悪いことではない。安易な救いを描かないからこそ、劇中で描かれている政治の問題は、より深刻で根が深いものだと視聴者に伝わる。苦い現実と向き合うためには、苦いドラマが必要なのだ。

 最後に、タイトルの「エルピス」とは、ギリシャ神話に登場する「パンドラの箱」の中に最後に残されたもので「希望」とも「災厄」とも言われている。

 最終話で描かれることが、希望となるのか災厄となるのかはわからないが、『エルピス』というドラマ自体が、あらゆる悪や不幸が閉じ込められた「パンドラの箱」だったのかもしれないと今は感じる。