浅川と岸本の姿に重なる『エルピス』制作の経緯

 本作の脚本は連続テレビ小説『カーネーション』(NHK)等で知られる渡辺あやが担当している。昨年は、名門大学で起こる不祥事に翻弄される広報担当者の姿を描いたブラックコメディ『今ここにある危機とぼくの好感度について』の脚本をNHKで執筆した渡辺だが、民放初の連続ドラマ執筆となる『エルピス』は、シリアスで重厚な社会派ドラマとなっている。

 チーフ演出は『モテキ』(テレビ東京系)などで知られる大根仁。細部まで作り込まれた硬派な映像が、サスペンスを盛り上げる。

 そして、プロデューサーは『カルテット』(TBS系)や『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)で知られる佐野亜裕美。

 本作は2016年頃に企画されたが(佐野が当時所属していた)TBSでは企画が通らなかった。しかし、佐野はあきらめずにTBS退社後に入社したカンテレ(関西テレビ)で改めて企画を提出し、ついにドラマ化されることとなった。

 上からの圧力に抵抗し、なんとか冤罪検証番組を作ろうとする浅川と岸本の姿は、『エルピス』を長い時間をかけて何とかドラマ化した佐野の姿と重なって見える。

 本作は2018年から始まるのだが、現在(2022年)ではなく、2010年代後半という近過去を舞台に設定したのは、このドラマは本来「あの時、作られるべきだった」と、佐野たちが考えているからではないかと思う。