「初心LOVE」大橋和也くんはHIPHOP系ダンスが得意!?

 最初に解説するのは、なにわ男子の言わずと知れたデビューシングル「初心LOVE」(2021年11月12日)です。この曲は、難易度だけでいえば易しく、みんなで真似できそうなシンプルな振り付け……ですが、実は見せ方が難しいんです。

 簡単なダンスは単調になりがちで、見ている人が飽きやすいパフォーマンスになってしまうことがあります。さらに、振り数が少なくてシンプルなほど粗が目立つので、一つひとつの動きを丁寧に踊る必要があります。それでも、なにわ男子のメンバーはうまく踊りこなしていました。

 じっくり見ていきます! さっそくサビから、【0:12】で一時停止してみてください。開始早々、大橋和也くんのスキルの高さが出ていますね。左肩を後ろに引くと同時にしっかり下げているので、角度が深くて立体的なポーズを作れています。ダンスが上手な人って、体の使い方を理解しているので、ポーズの作り方がいつも綺麗なんです。

【0:23】では、長尾謙杜くんが目線を上に飛ばすことで手の広がりをより広く表現できていますね。長尾くんは踊るときの動作が大きいメンバーです。他の場面でも動きが大きい瞬間がたくさん出てくるので、チェックしていきましょう。

【0:59~1:05「自分ばっかりで もうバカみたいだ」は道枝駿佑くんソロパートですが、表情作りが上手! 道枝くんはまゆげを動かしたり、目線を外したり、ソロで顔をアップで抜かれたときにばっちり仕事しています。ダンスは体だけでなく、表情のコントロールも同じくらい大切です。

 続いて、サビを見ていきましょう。【1:19】「シュンとなって キュンとなって」のときの西畑大吾くんのグーが、手首から少し外に折れているのがわかりますか? これだけで可愛い印象がぐっとアップするので、真似して踊るときは意識してみてください。写真を取るときのポーズにも使えます!

【1:22】「初心(うぶ)だね」は、カメラに抜かれている大西流星くん、高橋恭平くん、西畑くんがそれぞれ別の方向を向いていて、手の位置もバラバラなのに、なぜか一体感があります。これは3人が左肩を下げてポーズを作ることで、体全体の動きを統一しているため。各々が個性を出しながらも統一感を出せるというのは、グループとして素晴らしい技術ですね。

 その直後、【1:23】の、両手を右に伸ばした瞬間で一時停止してください。大橋くんだけ、後方に傾いたような体勢になっていて、体の使い方が他のメンバーと少し違うのが見えるかと思います。こうした体の使い方が自然に出るということは、大橋くん、実は力強いHIPHOP系のダンスが得意なのかなという印象を受けました(少し戻って【1:11】のしゃがんでいる部分でも、大橋くんは膝をやや広げていて、HIPHOPらしい動きになっています)。

 続いて【1:28】「OMG OMG 恋は暇じゃないさ」でも、大橋くんに注目してください。両手を上に広げながら後ろへ下がる際、下半身がブレずに上半身を動かすことができています。これは「アイソレーション」といって、体の一部分だけを動かすテクニックです。無駄な力を抜いてスムーズに動けるのは、ダンス上級者の証し!

 さらに、リズム感も抜群です。【1:32~1:33】大橋くんの左足の動きをよ~く見てください(スローの方が見やすいかもしれません)。ここでは“ワン・ツー・スリー……”で足踏みをして“フォー”で左足を後ろに上げるのが基本の振り付けですが、大橋くんは“スリー”と“フォー”の間で左足を前に振り上げ、「間(ま)」まで音を取っています。

 これは「エンカウント」もしくは「裏の音」と呼ばれているもので、リズム感の良いダンサーが取ることのできる音。“ワン・ツー・スリー・フォー”と表の音で手拍子をするのは簡単ですが、“ワン・ツー・スリー・“and”・フォー”と裏の音まで取るのは、けっこう難しいですよね。これを自然に体現できるのが大橋くんです。

 次は【1:33】「La la la lattta,」で止めて、間奏で横一列に並んだメンバーのみんなを見比べてみてください。個性が光っています。大西くんと西畑くんは比較的、胴体が平面に見えませんか? 左右の腰と肩の4点で、歪みのないきれいな長方形を作ることで、あどけなさやピュアな印象を与えることができます。逆にこなれた感じを出したいなら、他のメンバーみたいに少し角度をつけてあげるとよいでしょう。

【1:35】で指を差すポーズでは、長尾くんだけ明らかに違いますね。メインの振り付けは右手と顔の向きですが、よりポーズにハマるために左肩を下げて、右腰を前に出しています。長尾くんは、振り付けにはないプラスαの動きが自然にできてしまうセンスの持ち主なのかもと感じます。

【1:39】、カメラが引いていくシーンで一時停止してみると、藤原丈一郎くんの右足が一番高く上がっています。大きくはっきりと、振り付けに忠実にきっちり踊るタイプで、真面目でまっすぐな熱い男という印象を受けました。

 2番Bメロの【2:08】「眠れない夜泳いで 君の好きな曲リピートしてた」は、一瞬しか映ってないから見逃さないで! ここの大橋くんの「ウェーブ」がめちゃくちゃかっこいいんです。すぐにシーンが切り替わって続きが見えないのがすごくもったいない……!

 ちなみに「ウェーブ」とは、波打つように体を動かすテクニックのこと。このシーンでは頭を固定して、胸と胴だけでウェーブを通していますが、これがかなり難しいんです。一瞬しか見えないけど、大橋くんのダンススキルの高さがはっきりと垣間見える部分です。

 そして2番サビの【2:24】「シュンとなって キュンとなって」でも、大橋くんを見てください。肘の高さが高めで、他のメンバーと違っていますね。このポーズの作り方は、やっぱりHIPHOP系のゴリゴリかっこいいダンスを得意とするタイプなんじゃないかと推理します。逆に可愛く見せたいなら、他のメンバーみたいに肘の高さは低めで、脇をぎゅっと締めるといいと思います。

 Cメロ【2:36】は大西くんのソロパートから入りますが、ここで私は西畑くんの印象が変わりました。可愛く踊るタイプだと思っていたのに、ステップが深くてかっこいい! これは「チャールストン」というステップで、つま先をしっかり外側に向けてガニ股になるのがポイントですが、とても上手に踏めています。

「初心LOVE」をじっくり研究して改めて感じたのは、ダンスの魅力は振り付けの難易度だけでは語れないということ。最近のアイドルグループはダンススキルのインフレが進んでおり、倍速なのかと見紛えるほどの超高速&高難易度のダンスが多いです。興奮や勢いがある半面、圧迫感や息苦しさがあることも否めません。でも、なにわ男子のパフォーマンスはとても心穏やかに、ハッピーに楽しむことができました。笑顔が素敵でキラキラしているダンスを見ると、自然と元気をもらえますね!